老子:徳経:独立第八十
獨立第八十
小國寡民、使有什伯之器而不用、使民重死而不遠徙。
小国寡民、什伯の器有るも用いざらしめ、民をして死を重んじて遠く徙らざらしむ。
- ウィキソース「老子河上公章句/德經」参照。
- 小国寡民 … 国土が小さく、人民が少ないこと。理想の社会体制。
- 什伯之器 … いろいろな道具。一説に、普通の人以上の才能。底本では「什伯人之器」に作るが、二十二子所収王弼本・傅奕本等に従い改めた。
- 徙 … 移住する。
雖有舟轝、無所乗之、雖有甲兵、無所陳之。
舟輿有りと雖も、之に乗る所無く、甲兵有りと雖も、之を陳ぬる所無し。
- 舟輿 … 舟や車。「輿」は、乗り物。「轝」は「輿」の異体字。
- 甲兵 … よろいと武器。
- 陳 … 並べて使う。
使民復結繩而用之、甘其食、美其服、安其居、樂其俗。
民をして復た縄を結びて之を用い、其の食を甘しとし、其の服を美とし、其の居に安んじ、其の俗を楽しましむ。
- 民 … 二十二子所収王弼本では「人」に作る。
- 甘 … うまい。
- 俗 … 習俗。
鄰國相望、雞犬之聲相聞、民至老死、不相往來。
隣国相望み、鶏犬の声相聞こゆるも、民は老死に至るまで、相往来せず。
- 雞 … 「鶏」の異体字。
- 犬 … 底本では「狗」に作るが、道蔵所収河上公本・傅奕本等に従い改めた。
- 至老死 … 年老いて死ぬまで。
- 死 … 底本にはないが、二十二子所収王弼本・傅奕本等にはあるので補った。