老子:道経:検欲第十二
檢欲第十二
五色令人目盲。五音令人耳聾。五味令人口爽。
五色は人の目をして盲ならしむ。五音は人の耳をして聾せしむ。五味は人の口をして爽わしむ。
- ウィキソース「老子河上公章句/上」参照。
- 五色 … 青・黄・赤・白・黒の五種の色。ここでは色鮮やかな衣服などを指す。
- 令人目盲 … 人の目をくらませ、心をまどわせること。眩惑すること。
- 五音 … 宮・商・角・徴・羽の五音階。ここでは美しい音楽などを指す。
- 令人耳聾 … 人の耳をだめにする。美しい音楽にうっとりして心惑うこと。
- 五味 … 酸(すっぱい)・苦(にがい)・甘(あまい)・辛(からい)・鹹(しおからい)のこと。ここではおいしいご馳走を指す。
- 令人口爽 … 人の味覚を麻痺させる。「爽」は違う。調子を狂わせる。
馳騁田獵、令人心發狂。難得之貨、令人行妨。
馳騁田猟は人の心をして発狂せしむ。得難きの貨は人の行いをして妨げしむ。
- 馳騁 … 馬を走らせる。
- 田猟 … 狩猟。
- 発狂 … 人の心を狂わせる。人の心の正常な働きを失わせる。いわゆる「精神に異常を来すこと」ではない。
- 難得之貨 … 手に入れることの難しい財貨。珍しい財宝。「第三章」にも見える。
- 令人行妨 … 人の正しい行いを妨害する。
是以聖人、爲腹不爲目。故去彼取此。
是を以て聖人は腹の為にして目の為にせず。故に彼を去てて此を取る。