老子:徳経:淳風第五十七
淳風第五十七
以正治國、以奇用兵、以無事取天下。吾何以知其然哉。以此。
正を以て国を治め、奇を以て兵を用い、無事を以て天下を取る。吾何を以て其の然るを知るや。此を以てなり。
- ウィキソース「老子河上公章句/德經」参照。
- 正 … 正道。
- 奇 … 奇策。
- 以此 … 次の通りである。
天下多忌諱、而民彌貧。民多利器、國家滋昬。人多伎巧、奇物滋起。法令滋彰、盗賊多有。
天下に忌諱多くして、民弥〻貧し。民に利器多くして、国家滋〻昏し。人に伎巧多くして、奇物滋〻起る。法令滋〻彰かにして、盗賊多く有り。
- 忌諱 … 禁令。
- 利器 … 便利な器械。
- 昏 … 混乱する。
故聖人云、我無爲而民自化、我好靜而民自正、我無事而民自富、我無欲而民自樸。
故に聖人云う、我無為にして民自ずから化し、我静を好みて民自ずから正しく、我無事にして民自ずから富み、我無欲にして民自ずから樸なり、と。
- 樸 … 質朴。純朴。底本では「朴」に作るが、道蔵所収河上公本・道蔵所収王弼本等に従い改めた。仮借。