老子:道経:能為第十
能爲第十
載營魄抱一、能無離。
営魄を載せ一を抱き、能く離るること無からん。
- ウィキソース「老子河上公章句/上」参照。
- 営魄 … たましい。
- 載 … 乗せる。
- 抱一 … 道をいだく。「一」は道を指す。傅奕本では「袌一」に作る。
- 能無離 … 傅奕本、道蔵所収王弼本等では「能無離乎」に作る。
專氣致柔、能孾兒。
気を専らにし柔を致して、能く嬰児たらん。
- 専気致柔 … 呼吸をととのえて、身体を柔軟に保つ。
- 能嬰児 … 赤子のようであろう。傅奕本では「能如嬰児乎」、道蔵所収王弼本では「能嬰児乎」に作る。こちらは「赤子のようであろうか」と訳す。
滌除玄覽、能無疵。
玄覧を滌除して、能く疵無からん。
- 滌除玄覧 … 心を洗い清める。「滌除」は洗い除く。「玄覧」は奥深い鏡、心を指す。
- 能無疵 … 傷のないようにしよう。「疵」は傷。傅奕本、道蔵所収王弼本等では「能無疵乎」に作る。こちらは「傷をつけないままでいられようか」と訳す。
愛民治國、能無爲。
民を愛し国を治め、能く無為ならん。
- 能無為 … よく無為でありたい。底本では「能無知」に作るが、道蔵所収河上公本に従い「能無為」に改めた。傅奕本では「能無以知乎」、道蔵所収王弼本では「能無知乎」に作る。こちらは「知恵によらないままでいられるか」と訳す。
天門開闔、能爲雌。
天門開闔して、能く雌たらん。
- 天門開闔 … 天の門が開いたり閉じたりする。「天門」は天地の万物が生ずるという門戸。「開闔」は開閉。
- 能為雌 … 女性のように静かな態度でありたい。底本では「能無雌」に作るが、傅奕本、道蔵所収王弼本では「能為雌乎」に作るので、「能為雌」に改めた。
明白四達、能無知。
明白四達して、能く無知ならん。
- 明白四達 … 物事がはっきりとわかり、四方の出来事に通じる。
- 能無知 … 愚か者のようでありたい。傅奕本では「能無以為乎」に作る。道蔵所収王弼本では「能無知乎」に作る。
生之畜之、生而不有、爲而不恃、長而不宰。是謂玄德。
之を生じ之を畜い、生じて有せず、為して恃まず、長じて宰せず。是を玄徳と謂う。