老子:道経:異俗第二十
異俗第二十
絶學無憂。唯之與阿、相去幾何。善之與惡、相去何若。人之所畏、不可不畏。荒兮其未央哉。
学を絶てば憂い無し。唯と阿とは、相去ること幾何ぞ。善と悪とは、相去ること何若。人の畏るる所は、畏れざる可からず。荒として其れ未だ央きざるかな。
- ウィキソース「老子河上公章句/上」参照。
- 唯 … 丁寧な返事。はい。
- 阿 … ぞんざいな返事。ああ。
衆人煕煕、如享太牢、如春登臺。我獨怕兮其未兆、如孾兒之未孩。乘乘兮若無所歸。
衆人は煕煕として、太牢を享くるが如く、春、台に登るが如し。我独り怕として、其れ未だ兆さず、嬰児の未だ孩わざるが如し。乗乗として帰する所無きが若し。
- 煕煕 … なごやかに喜び合うさま。うれしそうなさま。
衆人皆有餘。而我獨若遺。我愚人之心也哉。沌沌兮。
衆人は皆余り有り。而るに我は独り遺るるが若し。我は愚人の心なるかな。沌沌たり。
俗人昭昭。我獨若昬。俗人察察。我獨悶悶。忽兮若海、漂兮若無所止。
俗人は昭昭たり。我は独り昏きが若し。俗人は察察たり。我は独り悶悶たり。忽として海の若く、漂として止まる所無きが若し。
衆人皆有以。而我獨頑似鄙。我獨異於人、而貴食母。
衆人は皆以うる有り。而るに我は独り頑にして鄙に似る。我は独り人に異なりて、母に食わるるを貴ぶ。