老子:徳経:貴生第五十
貴生第五十
出生入死。生之徒十有三。死之徒十有三。
生に出でて死に入る。生の徒は十に三有り。死の徒も十に三有り。
- ウィキソース「老子河上公章句/德經」参照。
- 生之徒 … 長寿な人々。
- 十有三 … 十人のうち三人いる。
- 死之徒 … 短命な人々。
人之生、動之死地亦十有三。夫何故。以其生生之厚。
人の生、動きて死地に之くもの、亦た十に三有り。夫れ何の故ぞ。其の生を生とするの厚きを以てなり。
- 死地 … 生命が危険にさらされる場所。死に見舞われる状態、条件。
- 亦 … 底本にはないが、二十二子所収王弼本・傅奕本等にはあるので補った。
- 厚 … 執着し過ぎるからである。
蓋聞、善攝生者、陸行不遇兕虎、入軍不被甲兵。
蓋し聞く、善く生を摂する者は、陸行して兕虎に遇わず、軍に入りて甲兵を被らず。
- 陸行 … 陸路を行くこと。陸上の旅。
- 兕虎 … 犀や虎。「兕」は、野牛に似た一角獣。犀の一種ともいう。
- 甲兵 … よろいと武器。
- 被 … 底本では「避」に作るが、道蔵所収王弼本・道蔵所収河上公本等に従い改めた。
兕無所投其角、虎無所措其爪、兵無所容其刃。夫何故。以其無死地。
兕も其の角を投ずる所無く、虎も其の爪を措く所無く、兵も其の刃を容るる所無し。夫れ何の故ぞ。其の死地無きを以てなり。
- 兕無所投其角 … 底本に「所」の字はないが、二十二子所収王弼本・傅奕本等にはあるので補った。
- 以其無死地 … 生に執着し過ぎるという、死に見舞われる条件がないからである。