老子:徳経:愛己第七十二
愛己第七十二
民不畏威、則大威至矣。
民、威を畏れざれば、則ち大威至らん。
- ウィキソース「老子河上公章句/德經」参照。
- 威 … 統治者の威光。
- 則 … 底本にはないが、道蔵所収河上公本・傅奕本等にはあるので補った。
- 大威 … 天罰。
無狎其所居、無厭其所生。
其の居る所を狎むること無かれ、其の生ずる所を厭すること無かれ。
- 狎 … 狭める。底本では「狹」に作るが、二十二子所収王弼本・傅奕本等に従い改めた。
- 厭 … 圧迫する。
夫唯不厭、是以不厭。
夫れ唯だ厭せず、是を以て厭わず。
- 夫唯不厭 … そもそも圧迫しないから。
- 是以 … 「ここをもって」と読み、「こういうわけで」「このゆえに」「それゆえに」「だから」と訳す。「以是」は「これをもって」と読み、「この点から」「これにより」「これを用いて」と訳す。
- 不厭 … 人民も統治者を嫌がらない。
是以聖人、自知不自見、自愛不自貴。故去彼取此。
是を以て聖人は、自らを知りて自らを見わさず、自らを愛して自らを貴ばず。故に彼を去りて此を取る。