老子:徳経:任信第七十八
任信第七十八
天下莫柔弱於水。而攻堅強者莫之能勝。其無以易之。
天下に水より柔弱なるは莫し。而も堅強を攻むる者、之に能く勝る莫し。其の以て之を易うる無ければなり。
- ウィキソース「老子河上公章句/德經」参照。
- 天下莫柔弱於水 … 底本では「天下柔弱莫過於水」に作るが、二十二子所収王弼本・傅奕本等に従い改めた。
- 莫之能勝 … 底本では「莫知能勝」に作るが、二十二子所収王弼本・道蔵所収河上公本等に従い改めた。
弱之勝強、柔之勝剛、天下莫不知、莫能行。
弱の強に勝ち、柔の剛に勝つは、天下知らざる莫きも、能く行う莫し。
- 莫能行 … それを実行できる者はいない。
故聖人云、受國之垢、是謂社稷主、受國不祥、是謂天下王。正言若反。
故に聖人云う、国の垢を受くる、是を社稷の主と謂い、国の不祥を受くる、是を天下の王と謂う、と。正言は反の若し。
- 故 … 二十二子所収王弼本では「是以」に作る。
- 垢 … 汚辱。屈辱。
- 社稷 … 国家・王朝をいう。社は、土地の神。稷は、五穀の神。この二神を国の守り神として必ず祭った。双声(二字の語頭子音が同じ)語。
- 謂天下王 … 二十二子所収王弼本では「爲天下王」に作る。
- 正言 … 正しい言葉。
- 反 … 常識的な言葉に反する。