六韜:均兵第五十五
武王問太公曰、以車與歩卒戰、一車當幾歩卒、幾歩卒當一車。以騎與歩卒戰、一騎當幾歩卒、幾歩卒當一騎。以車與騎戰、一車當幾騎、幾騎當一車。
武王、太公に問うて曰く、車を以て歩卒と戦わば、一車は幾歩卒に当り、幾歩卒か一車に当る。騎を以て歩卒と戦わば、一騎は幾歩卒に当り、幾歩卒か一騎に当る。車を以て騎と戦わば、一車は幾騎に当り、幾騎か一車に当る。
- ウィキソース「六韜」参照。
太公曰、車者、軍之羽翼也。所以陥堅陳、要強敵、遮走北也。騎者、軍之伺候也。所以踵敗軍、絶糧道、撃便寇也。故車騎不敵戰、則一騎不能當歩卒一人。三軍之衆、成陳而相當、則易戰之法、一車當歩卒八十人、八十人當一車、一騎當歩卒八人、八人當一騎、一車當十騎、十騎當一車。
太公曰く、車は軍の羽翼なり。堅陣を陥れ、強敵を要し、走り北ぐるを遮る所以なり。騎は軍の伺候なり。敗軍を踵い、糧道を絶ち、便寇を撃つ所以なり。故に車騎は敵せずして戦わば、則ち一騎は歩卒一人に当ること能わず。三軍の衆、陣を成して相当るに、則ち易戦の法、一車は歩卒八十人に当り、八十人は一車に当り、一騎歩卒八人に当り、八人は一騎に当り、一車は十騎に当り、十騎は一車に当る。
- 強 … 底本では「彊」に作るが、『直解』に従い改めた。
險戰之法、一車當歩卒四十人、四十人當一車、一騎當歩卒四人、四人當一騎、一車當六騎、六騎當一車。夫車騎者、軍之武兵也。十乗敗千人、百乗敗萬人。十騎走百人、百騎走千人。此其大數也。
険戦の法、一車は歩卒四十人に当り、四十人は一車に当り、一騎は歩卒四人に当り、四人は一騎に当り、一車は六騎に当り、六騎は一車に当る。夫れ車騎は軍の武兵なり。十乗は千人を敗り、百乗は万人を敗る。十騎は百人を走らせ、百騎は千人を走らす。此れ其の大数なり。
- 六騎當一車 … 底本では「六騎當一卒」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 十騎走百人 … 底本では「十騎敗百人」に作るが、『直解』に従い改めた。
武王曰、車騎之吏数与陳法奈何。
武王曰く、車騎の吏数と陣法は奈何。
太公曰、置車之吏數、五車一長、十車一吏、五十車一率、百車一將。易戰之法、五車爲列、相去四十歩、左右十歩、隊間六十歩。
太公曰く、車に置くの吏数は、五車に一長、十車に一吏、五十車に一率、百車に一将なり。易戦の法は、五車、列を為し、相去ること四十歩、左右十歩、隊の間は六十歩なり。
險戰之法、車必循道、十車爲聚、二十車爲屯、前後相去二十歩、左右六歩、隊間三十六歩。五車一長。縱横相去一里、各返故道。
険戦の法は、車は必ず道に循い、十車を聚と為し、二十車を屯と為し、前後相去ること二十歩、左右六歩、隊の間は三十六歩。五車に一長あり。縦横相去ること一里、各〻故道に返る。
- 一里 … 底本では「二里」に作るが、『直解』に従い改めた。
置騎之吏數、五騎一長、十騎一吏、百騎一率、二百騎一將。易戰之法、五騎爲列、前後相去二十歩、左右四歩、隊間五十歩。險戰者、前後相去十歩、左右二歩、隊間二十五歩。三十騎爲一屯、六十騎爲一輩、十騎一吏。縱横相去百歩、周還復故處。
騎に置くの吏数は、五騎に一長、十騎に一吏、百騎に一率、二百騎に一将なり。易戦の法は、五騎、列を為し、前後相去ること二十歩、左右四歩、隊の間は五十歩。険戦には、前後相去ること十歩、左右二歩、隊の間は二十五歩。三十騎を一屯と為し、六十騎を一輩と為し、十騎に一吏あり。縦横相去ること百歩、周還して各〻故処に復る。
- 周還 … 底本では「周環」に作るが、『直解』に従い改めた。
武王曰、善哉。
武王曰く、善きかな。
巻一 文韜 | |
文師第一 | 盈虚第二 |
国務第三 | 大礼第四 |
明伝第五 | 六守第六 |
守土第七 | 守国第八 |
上賢第九 | 挙賢第十 |
賞罰第十一 | 兵道第十二 |
巻二 武韜 | |
発啓第十三 | 文啓第十四 |
文伐第十五 | 順啓第十六 |
三疑第十七 |
巻三 竜韜 | |
王翼第十八 | 論将第十九 |
選将第二十 | 立将第二十一 |
将威第二十二 | 励軍第二十三 |
陰符第二十四 | 陰書第二十五 |
軍勢第二十六 | 奇兵第二十七 |
五音第二十八 | 兵徴第二十九 |
農器第三十 |
巻四 虎韜 | |
軍用第三十一 | 三陣第三十二 |
疾戦第三十三 | 必出第三十四 |
軍略第三十五 | 臨境第三十六 |
動静第三十七 | 金鼓第三十八 |
絶道第三十九 | 略地第四十 |
火戦第四十一 | 塁虚第四十二 |
巻五 豹韜 | |
林戦第四十三 | 突戦第四十四 |
敵強第四十五 | 敵武第四十六 |
烏雲山兵第四十七 | 烏雲沢兵第四十八 |
少衆第四十九 | 分険第五十 |
巻六 犬韜 | |
分合第五十一 | 武鋒第五十二 |
練士第五十三 | 教戦第五十四 |
均兵第五十五 | 武車士第五十六 |
武騎士第五十七 | 戦車第五十八 |
戦騎第五十九 | 戦歩第六十 |