>   その他   >   六韜   >   巻一 文韜:文師第一

六韜:ぶん第一

文王將田。史編布卜曰、田於渭陽、將大得焉。非龍、非彲、非虎、非羆。兆得公侯。天遺汝師、以之佐昌、施及三王。文王曰、兆致是乎。史編曰、編之太祖史疇爲舜占得皐陶。兆比於此。
文王ぶんおうまさかりせんとす。へんぼくきていわく、ようかりせば、まさおおいにるあらんとす。りゅうあらず、みずちあらず、とらあらず、あらず。ちょう公侯こうこうん。てんなんじおくり、これもっしょうたすけ、きて三王さんおうおよばん。文王ぶんおういわく、ちょうこれいたせるか。へんいわく、へんたいちゅうしゅんためうらないて皐陶こうようたり。ちょうこれす。
  • ウィキソース「六韜」参照。
  • 渭陽 … 渭水の北。
  • 舜 … 古代の伝説上の聖天子。姓はよう。虞に国を建てたので虞舜、または有虞氏と呼ばれる。堯から譲位を受け皇帝となった。ウィキペディア【】参照。底本では「禹」に作るが、『直解』に従い改めた。
文王乃齋三日、乗田車、駕田馬、田於渭陽。卒見太公坐茅以漁。文王勞而問之曰、子樂漁邪。太公曰、君子樂得其志。小人樂得其事。今吾漁、甚有似也。
文王ぶんおうすなわさいすることみっ田車でんしゃり、でんしてようかりす。つい太公たいこうぼうしてもっぎょするをる。文王ぶんおうねぎらいてこれうていわく、ぎょたのしむか。太公たいこういわく、くんこころざしるをたのしみ、しょうじんことるをたのしむ。いまぎょするもはなはたるり。
  • 邪 … 『直解』では「耶」に作る。
  • 君子樂得其志 … 底本では「臣聞君子樂得其志」に作るが、『直解』に従い改めた。
  • 甚有似也 … 底本では「甚有似也殆非樂之也」に作るが、『直解』に従い改めた。
文王曰、何謂其有似也。太公曰、釣有三權。禄等以權、死等以權、官等以權。夫釣以求得也。其情深。可以觀大矣。
文王ぶんおういわく、なにをかたりりとう。太公たいこういわく、つり三権さんけんり。ろくにもひとしくもっけんし、にもひとしくもっけんし、かんにもひとしくもっけんす。つりもっるをもとむるなり。じょうふかし。もっだいし。
文王曰、願聞其情。太公曰、源深而水流、水流而魚生之情也。根深而木長、木長而實生之情也。君子情同而親合、親合而事生之情也。言語應對者情之飾也。言至情者事之極也。今臣言至情不諱、君其惡之乎。文王曰、唯仁人能受正諫不惡至情。何爲其然。
文王ぶんおういわく、ねがわくはじょうかん。太公たいこういわく、みなもとふかくしてみずながれ、みずながれてうおこれしょうずるは、じょうなり。ふかくしてちょうじ、ちょうじてこれしょうずるは、じょうなり。くんじょうおなじくしてしんごうし、しんごうしてことこれしょうずるは、じょうなり。げん応対おうたいは、じょうかざりなり。じょううは、こときわみなり。いましんじょういてまず、きみこれにくまんか。文王ぶんおういわく、仁人じんじんのみ正諫せいかんけてじょうにくまず。なんすれぞからん。
  • 正諫 … 底本では「至諫」に作るが、『直解』に従い改めた。
太公曰、緡微餌明、小魚食之、緡綢餌香、中魚食之、緡隆餌豐、大魚食之。夫魚食其餌、乃牽於緡、人食其禄、乃服於君。
太公たいこういわく、いとにしてえさあきらかなれば、しょうぎょこれみ、いとちゅうにしてえさかんばしければ、ちゅうぎょこれみ、いとさかんにしてえさゆたかなれば、大魚たいぎょこれむ。うおえさみて、すなわいとかれ、ひとろくみて、すなわきみふくす。
  • 綢 … 底本では「調」に作るが、『直解』に従い改めた。
故以餌取魚、魚可殺。以禄取人、人可竭。以家取國、國可拔。以國取天下、天下可畢。
ゆええさもっうおれば、うおころし。ろくもっひとれば、ひとつくし。いえもっくにれば、くにし。くにもってんれば、てんつくし。
嗚呼、曼曼綿綿、其聚必散。嘿嘿昧昧、其光必遠。微哉、聖人之德、誘乎獨見。樂哉、聖人之慮、各歸其次而立斂焉。
嗚呼ああ曼曼まんまん綿綿めんめんたるも、しゅうかならさんず。嘿嘿もくもく昧昧まいまいたるも、ひかりかならとおし。なるかな聖人せいじんとくゆうとしてひとあらわる。たのしきかな聖人せいじんりょ各〻おのおのしてれんつ。
  • 立 … 底本では「樹」に作るが、『直解』に従い改めた。
文王曰、立斂何若而天下歸之。
文王ぶんおういわく、れんつること何若いかにして、てんこれせん。
  • 立 … 底本では「樹」に作るが、『直解』に従い改めた。
太公曰、天下非一人之天下、乃天下之天下也。同天下之利者、則得天下、擅天下之利者、則失天下。
太公たいこういわく、てん一人いちにんてんあらず、すなわてんてんなり。てんおなじくするものは、すなわてんてんほしいままにするものは、すなわてんうしなう。
天有時、地有財。能與人共之者仁也。仁之所在、天下歸之。
てんときり、ざいり。ひとこれともにするものじんなり。じんところは、てんこれす。
免人之死、解人之難、救人之患、濟人之急者德也。德之所在、天下歸之。與人同憂、同樂、同好、同惡者、義也。義之所在、天下赴之。
ひとのがれしめ、ひとなんき、ひとかんすくい、ひときゅうすくものとくなり。とくところは、てんこれす。ひとうれいをおなじくし、たのしみをおなじくし、このみをおなじくし、にくみをおなじくするものなり。ところは、てんこれおもむく。
凡人惡死而樂生、好德而歸利。能生利者道也。道之所在、天下歸之。
およひとにくみてせいたのしみ、とくこのみてす。せいせしむるものみちなり。みちところは、てんこれす。
文王再拜曰、允哉、敢不受天之詔命乎。乃載與倶歸、立爲師。
文王ぶんおう再拝さいはいしていわく、まことなるかな、えててんしょうめいけざらんや。すなわせてともともかえり、ててとなす。
巻一 文韜
文師第一 盈虚第二
国務第三 大礼第四
明伝第五 六守第六
守土第七 守国第八
上賢第九 挙賢第十
賞罰第十一 兵道第十二
巻二 武韜
発啓第十三 文啓第十四
文伐第十五 順啓第十六
三疑第十七  
巻三 竜韜
王翼第十八 論将第十九
選将第二十 立将第二十一
将威第二十二 励軍第二十三
陰符第二十四 陰書第二十五
軍勢第二十六 奇兵第二十七
五音第二十八 兵徴第二十九
農器第三十  
巻四 虎韜
軍用第三十一 三陣第三十二
疾戦第三十三 必出第三十四
軍略第三十五 臨境第三十六
動静第三十七 金鼓第三十八
絶道第三十九 略地第四十
火戦第四十一 塁虚第四十二
巻五 豹韜
林戦第四十三 突戦第四十四
敵強第四十五 敵武第四十六
烏雲山兵第四十七 烏雲沢兵第四十八
少衆第四十九 分険第五十
巻六 犬韜
分合第五十一 武鋒第五十二
練士第五十三 教戦第五十四
均兵第五十五 武車士第五十六
武騎士第五十七 戦車第五十八
戦騎第五十九 戦歩第六十