六韜:金鼓第三十八
武王問太公曰、引兵深入諸侯之地、與敵相當、而天大寒甚暑、日夜霖雨、旬日不止、溝壘悉壞、隘塞不守、斥候懈怠、士卒不戒、敵人夜來、三軍無備、上下惑亂、爲之奈何。
武王、太公に問うて曰く、兵を引いて深く諸侯の地に入り、敵と相当りて、天大いに寒く、甚だ暑く、日夜霖雨して、旬日まで止まず、溝塁悉く壊れ、隘塞守らず、斥候懈怠し、士卒戒めざるに、敵人夜来り、三軍備え無く、上下惑乱せば、之を為すこと奈何。
- ウィキソース「六韜」参照。
太公曰、凡三軍以戒爲固、以怠爲敗。令我壘上、誰何不絶、人執旌旗、外内相望、以號相命、勿令乏音。
太公曰く、凡そ三軍は戒むるを以て固しと為し、怠るを以て敗ると為す。我が塁上をして、誰何することを絶えざらしめ、人ごとに旌旗を執り、外内相望み、号を以て相命じ、音を乏しからしむる勿かれ。
而皆外向、三千人爲一屯、誡而約之、各愼其處。敵人若來、視我軍之警戒、至而必還。力盡氣怠、發我鋭士、隨而撃之。
而して皆外に向い、三千人を一屯と為し、誡めて之を約し、各〻其の処を慎ましめよ。敵人若し来るも、我が軍の警戒を視ば、至るも必ず還らん。力尽き気怠らば、我が鋭士を発し、随いて之を撃て。
- 視 … 底本では「親」に作るが、『直解』に従い改めた。
武王曰、敵人知我隨之、而伏其鋭士、佯北不止、遇伏而還、或撃我前、或撃我後、或薄我壘、吾三軍大恐、擾亂失次、離其處所。爲之奈何。
武王曰く、敵人、我が之に随うを知りて、其の鋭士を伏せ、佯り北げて止まらず、伏に遇いて還るに、或いは我が前を撃ち、或いは我が後ろを撃ち、或いは我が塁に薄らば、我が三軍大いに恐れ、擾乱して次を失い、其の処所を離れん。之を為すこと奈何。
- 遇伏而還 … 底本では「過伏而還」に作るが、『直解』に従い改めた。
太公曰、分爲三隊、隨而追之、勿越其伏。三隊倶至、或撃其前後、或陥其兩旁、明號審令、疾撃而前、敵人必敗。
太公曰く、分ちて三隊と為し、随いて之を追い、其の伏を越ゆる勿かれ。三隊倶に至り、或いは其の前後を撃ち、或いは其の両旁を陥れ、号を明らかにし令を審らかにし、疾く撃ちて前まば、敵人必ず敗れん。
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