六韜:五音第二十八
武王問太公曰、律音之聲、可以知三軍之消息、勝負之决乎。
武王、太公に問うて曰く、律音の声は、以て三軍の消息、勝負の決を知る可きか。
- ウィキソース「六韜」参照。
太公曰、深哉、王之問也。夫律管十二、其要有五音。宮、商、角、徴、羽。此眞正聲也。萬代不易、五行之神、道之常也。金、木、水、火、土、各以其勝攻也。
太公曰く、深いかな、王の問いや。夫れ律管は十二、其の要は五音有り。宮・商・角・徴・羽。此れ真の正声なり。万代不易、五行の神にして、道の常なり。金・木・水・火・土、各〻其の勝を以て攻むるなり。
- 眞 … 底本では「其」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 金 … 底本では「可以知敵金」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 攻也 … 底本では「攻之」に作るが、『直解』に従い改めた。
古者三皇之世、虚無之情、以制剛強、無有文字、皆由五行。五行之道、天地自然、六甲之分、微妙之神。
古者、三皇の世は、虚無の情、以て剛強を制し、文字有ること無く、皆五行に由れり。五行の道は、天地の自然にして、六甲の分、微妙の神なり。
- 剛強 … 底本では「剛彊」に作るが、『直解』に従い改めた。
其法以天清淨無陰雲風雨、夜半遣輕騎、徃至敵人之壘、去九百歩外、徧持律管、當耳大呼驚之。
其の法は、天、清浄にして陰雲風雨無きを以て、夜半に軽騎を遣り、往きて敵人の塁に至り、去ること九百歩の外にして、徧く律管を持ち、耳に当て大いに呼びで之を驚かす。
有聲應管。其來甚微。角聲應管、當以白虎。徴聲應管、當以玄武。商聲應管、當以朱雀。羽聲應管、當以勾陳。五管聲盡不應者宮也。當以青龍。此五行之符、佐勝之徴、成敗之機。
声有りて管に応ず。其の来ること甚だ微なり。角声、管に応ずれば、当に白虎を以てすべし。徴声、管に応ずれば、当に玄武を以てすべし。商声、管に応ずれば、当に朱雀を以てすべし。羽声、管に応ずれば、当に勾陳を以てすべし。五管の声尽く応ぜざれば、宮なり。当に青龍を以てすべし。此れ五行の符、勝を佐くるの徴、成敗の機なり。
武王曰、善哉。
武王曰く、善いかな。
太公曰、微妙之音、皆有外候。武王曰、何以知之。太公曰、敵人驚動、則聽之。聞枹鼓之音者角也。見火光者徴也。聞金鐵矛戟之音者商也。聞人嘯呼之音者羽也。寂寞無聞者宮也。此五音者、聲色之符也。
太公曰く、微妙の音は皆外候有り。武王曰く、何を以てか之を知らん。太公曰く、敵人驚動すれば、則ち之を聴く。枹鼓の音を聞くは角なり。火光を見るは徴なり。金鉄矛戟の音を聞くは商なり。人の嘯呼の音を聞くは羽なり。寂寞として聞こゆる無きは宮なり。此の五音は、声色の符なり。
- 此五音者 … 底本に「音」の字はないが、『直解』に従い補った。
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