六韜:略地第四十
武王問太公曰、戰勝深入、略其地、有大城不可下。其別軍守險、與我相拒、我欲攻城圍邑、恐其別軍卒至而薄我、中外相合、撃我表裏、三軍大亂、上下恐駭。爲之奈何。
武王、太公に問うて曰く、戦い勝ちて深く入り、其の地を略するに、大城の下す可からざる有り。其の別軍、険を守りて、我と相拒ぎ、我、城を攻め邑を囲まんと欲するも、其の別軍、卒かに至りて我に薄り、中外相合して、我が表裏を撃ち、三軍大いに乱れ、上下恐駭せんことを恐る。之を為すこと奈何。
- ウィキソース「六韜」参照。
- 薄我 … 底本では「撃我」に作るが、『直解』に従い改めた。
太公曰、凡攻城圍邑、車騎必遠屯衛、警戒阻其外内、中人絶糧、外不得輸、城人恐怖、其將必降。
太公曰く、凡そ城を攻め邑を囲むに、車騎必ず遠く屯衛し、警戒して其の外内を阻て、中人糧を絶ち、外、輸すことを得ざれば、城人恐怖し、其の将必ず降らん。
武王曰、中人絶糧、外不得輸、陰爲約誓、相與密謀、夜出窮寇死戰、其車騎鋭士、或衝我内、或撃我外、士卒迷惑、三軍敗亂。爲之奈何。
武王曰く、中人、糧を絶ち、外、輸すことを得ざるに、陰かに約誓を為し、相与に密かに謀り、夜、窮寇を出して死戦し、其の車騎鋭士、或いは我が内を衝き、或いは我が外を撃たば、士卒迷惑し、三軍敗乱せん。之を為すこと奈何。
太公曰、如此者、當分軍爲三軍、謹視地形而處、審知敵人別軍所在、及其大城別堡、爲之置遺缺之道、以利其心、謹備勿失。敵人恐懼、不入山林、即歸大邑。走其別軍、車騎遠要其前、勿令遺脱。
太公曰く、此の如き者は、当に軍を分ちて三軍と為し、謹んで地形を視て処り、審らかに敵人の別軍の在る所、及び其の大城別堡を知り、之が為に遺缺の道を置き、以て其の心を利し、備えを謹んで失う勿かるべし。敵人恐懼し、山林に入らざれば、即ち大邑に帰らん。其の別軍を走らしめ、車騎遠く其の前を要し、遺脱せしむる勿かれ。
- 當分軍 … 『直解』には「軍」の字なし。
中人以爲先出者、得其徑道。其練卒材士必出、其老弱獨在。
中人以為えらく先ず出づる者は、其の径道を得ん、と。其の練卒材士、必ず出で、其の老弱独り在らん。
車騎深入長驅、敵人之軍、必莫敢至。
車騎深く入りて長駆せば、敵人の軍、必ず敢えて至る莫からん。
愼勿與戰。絶其糧道、圍而守之、必久其日。無燔人積聚。無毀人宮室。冢樹社叢勿伐。降者勿殺。得而勿戮。示之以仁義、施之以厚德、令其士民曰、罪在一人。如此則天下和服。
慎んで与に戦う勿かれ。其の糧道を絶ち、囲みて之を守り、必ず其の日を久しくせよ。人の積聚を燔くこと無かれ。人の宮室を毀つこと無かれ。冢樹社叢は伐ること勿かれ。降る者は殺すこと勿かれ。得るとも戮すこと勿かれ。之に示すに仁義を以てし、之に施すに厚徳を以てし、其の士民に令して曰え、罪は一人に在りと。此の如くならば則ち天下和服せん。
- 無毀 … 底本では「無壞」に作るが、『直解』に従い改めた。
武王曰、善哉。
武王曰く、善きかな。
巻一 文韜 | |
文師第一 | 盈虚第二 |
国務第三 | 大礼第四 |
明伝第五 | 六守第六 |
守土第七 | 守国第八 |
上賢第九 | 挙賢第十 |
賞罰第十一 | 兵道第十二 |
巻二 武韜 | |
発啓第十三 | 文啓第十四 |
文伐第十五 | 順啓第十六 |
三疑第十七 |
巻三 竜韜 | |
王翼第十八 | 論将第十九 |
選将第二十 | 立将第二十一 |
将威第二十二 | 励軍第二十三 |
陰符第二十四 | 陰書第二十五 |
軍勢第二十六 | 奇兵第二十七 |
五音第二十八 | 兵徴第二十九 |
農器第三十 |
巻四 虎韜 | |
軍用第三十一 | 三陣第三十二 |
疾戦第三十三 | 必出第三十四 |
軍略第三十五 | 臨境第三十六 |
動静第三十七 | 金鼓第三十八 |
絶道第三十九 | 略地第四十 |
火戦第四十一 | 塁虚第四十二 |
巻五 豹韜 | |
林戦第四十三 | 突戦第四十四 |
敵強第四十五 | 敵武第四十六 |
烏雲山兵第四十七 | 烏雲沢兵第四十八 |
少衆第四十九 | 分険第五十 |
巻六 犬韜 | |
分合第五十一 | 武鋒第五十二 |
練士第五十三 | 教戦第五十四 |
均兵第五十五 | 武車士第五十六 |
武騎士第五十七 | 戦車第五十八 |
戦騎第五十九 | 戦歩第六十 |