六韜:六守第六
文王問太公曰、君國主民者、其所以失之者何也。太公曰、不謹所與也。人君有六守三寳。
文王、太公に問うて曰く、国に君たり民に主たる者、其の之を失う所以の者は何ぞや。太公曰く、与にする所を謹まざればなり。人君に六守、三宝有り。
- ウィキソース「六韜」参照。
- 謹… 底本では「愼」に作るが、『直解』に従い改めた。
文王曰、六守何也。太公曰、一曰仁。二曰義。三曰忠。四曰信。五曰勇。六曰謀。是謂六守。
文王曰く、六守とは何ぞや。太公曰く、一に曰く仁。二に曰く義。三に曰く忠。四に曰く信。五に曰く勇。六に曰く謀。是を六守と謂う。
文王曰、謹擇六守者何。太公曰、富之而觀其無犯、貴之而觀其無驕、付之而觀其無轉、使之而觀其無隱、危之而觀其無恐、事之而觀其無窮。
文王曰く、謹んで六守を択ぶとは何ぞや。太公曰く、之を富まして其の犯す無きを観、之を貴くして其の驕る無きを観、之に付して其の転ずる無きを観、之を使いて其の隠す無きを観、之を危うくして其の恐る無きを観、之に事して其の窮する無きを観る。
- 謹 … 底本では「愼」に作るが、『直解』に従い改めた。
富之而不犯者仁也。貴之而不驕者義也。付之而不轉者忠也。使之而不隱者信也。危之而不恐者勇也。事之而不窮者謀也。人君無以三寳借人。借人則君失其威。
之を富まして犯さざる者は仁なり。之を貴くして驕らざる者は義なり。之に付して転ぜざる者は忠なり。之を使いて隠さざる者は信なり。之を危うくして恐れざる者は勇なり。之に事して窮せざる者は謀なり。人君は三宝を以て人に借す無かれ。人に借せば則ち君其の威を失う。
文王曰、敢問三寳。太公曰、大農、大工、大商、謂之三寳。農一其郷則穀足、工一其郷則器足、商一其郷則貨足。三寳各安其處、民乃不慮、無亂其郷、無亂其族。
文王曰く、敢えて三宝を問う。太公曰く、大農、大工、大商、之を三宝と謂う。農、其の郷に一なれば則ち穀足り、工、其の郷に一なれば則ち器足り、商、其の郷に一なれば則ち貨足る。三宝各〻其の処に安んずれば、民乃ち慮らず、其の郷を乱す無く、其の族を乱す無し。
臣無富於君。都無大於國。六守長則君昌、三寳全則國安。
臣は君よりも富ます無かれ。都は国よりも大なる無かれ。六守長ずれば則ち君昌え、三宝全ければ則ち国安し。
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