六韜:選将第二十
武王問太公曰、王者舉兵、簡練英雄、知士之高下、爲之奈何。
武王、太公に問うて曰く、王者、兵を挙ぐるに、英雄を簡練し、士の高下を知る、之を為すこと奈何。
- ウィキソース「六韜」参照。
- 簡練 … 底本では「欲簡練」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 雄 … 底本および『直解』では「權」に作るが、『四部叢刊 初篇子部』所収本に従い改めた。
太公曰、夫士外貌不與中情相應者十五。
太公曰く、夫れ士は外貌、中情と相応ぜざる者十五あり。
- 中情 … 『直解』では「衆情」に作る。
有賢而不肖者。有温良而爲盗者。有貌恭敬而心慢者。
賢にして不肖なる者有り。温良にして盗を為す者有り。貌恭敬にして心慢なる者有り。
- 賢 … 底本では「巖」に作るが、『直解』に従い改めた。
有外謙謹而内無恭敬者。有精精而無情者。有湛湛而無誠者。有好謀而無決者。有如果敢而不能者。有悾悾而不信者。有恍恍惚惚而反忠實者。
外謙謹にして内恭敬無き者有り。精精にして情無き者有り。湛湛として誠無き者有り。謀を好みて決無き者有り。果敢の如くにして能わざる者有り。悾悾として信ならざる者有り。恍恍惚惚として反って忠実なる者有り。
- 謙謹 … 底本では「廉謹」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 恭敬 … 底本では「至誠」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 無決 … 底本では「不决」に作るが、『直解』に従い改めた。「决」は「決」の異体字。
- 恍恍 … 底本では「怳怳」に作るが、『直解』に従い改めた。
有詭激而有功効者。有外勇而内怯者。有肅肅而反易人者。有嗃嗃而反靜愨者。有勢虚形劣而出外無所不至、無所不遂者。
詭激にして功効有る者有り。外勇にして内怯なる者有り。粛粛として反って人を易る者有り。嗃嗃として反って静愨なる者有り。勢虚しく形劣りて外に出でて至らざる所無く、遂げざる所無き者有り。
- 出外 … 底本では「外出」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 無所不遂者 … 『直解』では「無使不遂者」に作る。
天下所賤、聖人所貴、凡人不知。非有大明、不見其際。此士之外貌、不與中情相應者也。
天下の賤しむ所、聖人の貴ぶ所、凡人は知らず。大明有るに非ざれば、其の際を見ず。此れ士の外貌、中情と相応ぜざる者なり。
- 凡人不知 … 底本では「凡人莫知」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 中情 … 『直解』では「衆情」に作る。
武王曰、何以知之。太公曰、知之有八徴。一曰、問之以言、以觀其詳。二曰、窮之以辭、以觀其變。三曰、與之間諜、以觀其誠。四曰、明白顯問、以觀其德。五曰、使之以財、以觀其廉。六曰、試之以色、以觀其貞。七曰、告之以難、以觀其勇。八曰、醉之以酒、以觀其態。八徴皆備、則賢不肖別矣。
武王曰く、何を以てか之を知らん。太公曰く、之を知るに八徴有り。一に曰く、之に問うに言を以てし、以て其の詳を観る。二に曰く、之を窮するに辞を以てし、以て其の変を観る。三に曰く、之に間諜を与えて、以て其の誠を観る。四に曰く、明白に顕問して、以て其の徳を観る。五に曰く、之を使うに財を以てし、以て其の廉を観る。六に曰く、之を試すに色を以てし、以て其の貞を観る。七に曰く、之に告ぐるに難を以てし、以て其の勇を観る。八に曰く、之を酔わすに酒を以てし、以て其の態を観る。八徴皆備われば、則ち賢不肖別ける。
巻一 文韜 | |
文師第一 | 盈虚第二 |
国務第三 | 大礼第四 |
明伝第五 | 六守第六 |
守土第七 | 守国第八 |
上賢第九 | 挙賢第十 |
賞罰第十一 | 兵道第十二 |
巻二 武韜 | |
発啓第十三 | 文啓第十四 |
文伐第十五 | 順啓第十六 |
三疑第十七 |
巻三 竜韜 | |
王翼第十八 | 論将第十九 |
選将第二十 | 立将第二十一 |
将威第二十二 | 励軍第二十三 |
陰符第二十四 | 陰書第二十五 |
軍勢第二十六 | 奇兵第二十七 |
五音第二十八 | 兵徴第二十九 |
農器第三十 |
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軍用第三十一 | 三陣第三十二 |
疾戦第三十三 | 必出第三十四 |
軍略第三十五 | 臨境第三十六 |
動静第三十七 | 金鼓第三十八 |
絶道第三十九 | 略地第四十 |
火戦第四十一 | 塁虚第四十二 |
巻五 豹韜 | |
林戦第四十三 | 突戦第四十四 |
敵強第四十五 | 敵武第四十六 |
烏雲山兵第四十七 | 烏雲沢兵第四十八 |
少衆第四十九 | 分険第五十 |
巻六 犬韜 | |
分合第五十一 | 武鋒第五十二 |
練士第五十三 | 教戦第五十四 |
均兵第五十五 | 武車士第五十六 |
武騎士第五十七 | 戦車第五十八 |
戦騎第五十九 | 戦歩第六十 |