六韜:兵道第十二
武王問太公曰、兵道何如。太公曰、凡兵之道、莫過乎一。一者能獨往獨來。黄帝曰、一者階於道、幾於神。用之在於機、顯之在於勢、成之在於君。故聖王號兵爲凶器、不得已而用之。
武王、太公に問うて曰く、兵道は何如。太公曰く、凡そ兵の道は、一に過ぎたるは莫し。一なる者は能く独り往き独り来たるなり。黄帝曰く、一は道に階り、神に幾し、と。之を用うるは機に在り、之を顕すは勢に在り、之を成すは君に在り。故に聖王は兵を号して凶器と為し、已むを得ずして之を用う。
- ウィキソース「六韜」参照。
今商王知存而不知亡、知樂而不知殃。夫存者非存、在於慮亡。樂者非樂、在於慮殃。今王已慮其源。豈憂其流乎。
今、商王は存を知りて亡を知らず、楽を知りて殃を知らず。夫れ存は存に非ず、亡を慮るに在り。楽は楽に非ず、殃を慮るに在り。今、王、已に其の源を慮る。豈に其の流れを憂えんや。
武王曰、兩軍相遇。彼不可來、此不可往、各設固備、未敢先發。我欲襲之、不得其利。爲之奈何。
武王曰く、両軍相遇う。彼は来る可からず、此は往く可からず、各〻固き備えを設け、未だ敢えて先ず発せず。我、之を襲わんと欲するも、其の利を得ず。之を為すこと奈何。
太公曰、外亂而内整、示飢而實飽、内精而外鈍、一合一離、一聚一散、陰其謀、密其機、高其壘、伏其鋭士、寂若無聲。敵不知我所備。欲其西、襲其東。
太公曰く、外乱れて内整い、飢えを示して実は飽き、内精にして外鈍く、一合一離、一聚一散、其の謀を陰し、其の機を密にし、其の塁を高くし、其の鋭士を伏せ、寂として声無きが若くせよ。敵は我が備うる所を知らざらん。其の西を欲せば、其の東を襲え。
- 飢 … 『直解』では「饑」に作る。
武王曰、敵知我情、通我謀、爲之奈何。太公曰、兵勝之術、密察敵人之機、而速乗其利、復疾撃其不意。
武王曰く、敵、我が情を知り、我が謀に通ぜば、之を為すこと奈何。太公曰く、兵勝の術は、密かに敵人の機を察して、速やかに其の利に乗じ、復た疾く其の不意を撃つ。
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