六韜:臨境第三十六
武王問太公曰、吾與敵人臨境相拒、彼可以來、我可以徃、陳皆堅固、莫敢先舉。我欲徃而襲之、彼亦可以來。爲之奈何。
武王、太公に問うて曰く、吾、敵人と境に臨みて相拒ぐに、彼は以て来る可く、我は以て往く可く、陣皆堅固にして、敢えて先ず挙ぐる莫し。我往きて之を襲わんと欲し、彼も亦た以て来る可し。之を為すこと奈何。
- ウィキソース「六韜」参照。
- 彼亦可以來 … 底本に「以」の字はないが、『直解』にあるので補った。
太公曰、分兵三處、令我前軍深溝増壘而無出、列旌旗、撃鼙皷、完爲守備、令我後軍、多積糧食、無使敵人知我意、發我鋭士、潜襲其中、撃其不意、攻其無備。敵人不知我情、則止不來矣。
太公曰く、兵を三処に分ち、我が前軍をして溝を深く塁を増して出づること無く、旌旗を列ね、鼙鼓を撃ち、完く守備を為さ詩め、我が後軍をして、多く糧食を積んで、敵人をして我が意を知ること無からしめ、我が鋭士を発して、潜に其の中を襲い、其の不意を撃ち、其の備え無きを攻めよ。敵人、我が情を知らざれば、則ち止まりて来らざらん。
- 令我前軍 … 底本では「令軍前軍」に作るが、『直解』に従い改めた。
武王曰、敵人知我之情、通我之謀、動則得我事、其鋭士伏於深草、要我隘路、撃我便處。爲之奈何。
武王曰く、敵人、我が情を知り、我が謀に通じ、動かば則ち我が事を得、其の鋭士、深草に伏し、我が隘路を要し、我が便処を撃つ。之を為すこと奈何。
- 通我之謀 … 『直解』では「通我之機」に作る。
- 要我隘路 … 底本に「我」の字はないが、『直解』にあるので補った。
太公曰、令我前軍日出挑戰、以勞其意、令我老弱拽柴揚塵、鼓呼而徃來、或出其左、或出其右、去敵無過百歩。其將必勞、其卒必駭。
太公曰く、我が前軍をして、日に出でて戦いを挑み、以て其の意を労せしめ、我が老弱をして柴を曳き塵を揚げ、鼓呼して往来し、或いは其の左に出で、或いは其の右に出で、敵を去ること百歩に過ぐる無からしめよ。其の将必ず労し、其の卒必ず駭かん。
- 或 … 底本では「」に作る(2箇所)。
如此則敵人不敢來。吾徃者不止、或襲其内、或撃其外、三軍疾戰、敵人必敗。
此の如くならば則ち敵人敢えて来らざらん。吾が往く者止まずして、或いは其の内を襲い、或いは其の外を撃ち、三軍疾く戦わば、敵人必ず敗れん。
巻一 文韜 | |
文師第一 | 盈虚第二 |
国務第三 | 大礼第四 |
明伝第五 | 六守第六 |
守土第七 | 守国第八 |
上賢第九 | 挙賢第十 |
賞罰第十一 | 兵道第十二 |
巻二 武韜 | |
発啓第十三 | 文啓第十四 |
文伐第十五 | 順啓第十六 |
三疑第十七 |
巻三 竜韜 | |
王翼第十八 | 論将第十九 |
選将第二十 | 立将第二十一 |
将威第二十二 | 励軍第二十三 |
陰符第二十四 | 陰書第二十五 |
軍勢第二十六 | 奇兵第二十七 |
五音第二十八 | 兵徴第二十九 |
農器第三十 |
巻四 虎韜 | |
軍用第三十一 | 三陣第三十二 |
疾戦第三十三 | 必出第三十四 |
軍略第三十五 | 臨境第三十六 |
動静第三十七 | 金鼓第三十八 |
絶道第三十九 | 略地第四十 |
火戦第四十一 | 塁虚第四十二 |
巻五 豹韜 | |
林戦第四十三 | 突戦第四十四 |
敵強第四十五 | 敵武第四十六 |
烏雲山兵第四十七 | 烏雲沢兵第四十八 |
少衆第四十九 | 分険第五十 |
巻六 犬韜 | |
分合第五十一 | 武鋒第五十二 |
練士第五十三 | 教戦第五十四 |
均兵第五十五 | 武車士第五十六 |
武騎士第五十七 | 戦車第五十八 |
戦騎第五十九 | 戦歩第六十 |