六韜:突戦第四十四
武王問太公曰、敵人深入長驅、侵掠我地、驅我牛馬、其三軍大至、薄我城下、吾士卒大恐、人民係累、爲敵所虜、吾欲以守則固、以戰則勝。爲之奈何。
武王、太公に問うて曰く、敵人深く入りて長駆し、我が地を侵掠し、我が牛馬を駆り、其の三軍大いに至り、我が城下に薄り、吾が士卒大いに恐れ、人民係累せられて、敵の虜とする所と為らんに、吾、以て守れば則ち固く、以て戦えば則ち勝たんと欲す。之を為すこと奈何。
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太公曰、如此者、謂之突兵。其牛馬必不得食、士卒絶糧。暴撃而前、令我遠邑別軍、選其鋭士、疾撃其後、審其期日、必會於晦、三軍疾戰、敵人雖衆、其將可虜。
太公曰く、此の如き者は、之を突兵と謂う。其の牛馬は必ず食うを得ず、士卒は糧を絶たん。暴に撃ちて前み、我が遠邑の別軍をして、其の鋭士を選び、疾く其の後ろを撃たしめ、其の期日を審らかにし、必ず晦に会して、三軍疾く戦わば、敵人衆しと雖も、其の将、虜にす可し。
武王曰、敵人分爲三四、或戰而侵掠我地、或止而収我牛馬、其大軍未盡至、而使寇薄我城下、致吾三軍恐懼。爲之奈何。
武王曰く、敵人分ちて三四と為り、或いは戦いて我が地を侵掠し、或いは止まりて我が牛馬を収め、其の大軍未だ尽く至らざるに、寇をして我が城下に薄らしめ、吾が三軍の恐懼を致す。之を為すこと奈何。
太公曰、謹候敵人、未盡至則設備而待之、去城四里而爲壘、金鼓旌旗、皆列而張、別隊爲伏兵、令我壘上多積強弩、百歩一突門、門有行馬、車騎居外、勇力鋭士隱伏而處。
太公曰く、謹んで敵人を候い、未だ尽く至らざれば則ち備えを設けて之を待ち、城を去ること四里にして塁を為り、金鼓旌旗、皆列ねて張り、隊を別ちて伏兵と為し、我が塁上をして多く強弩を積ましめ、百歩ごとに一の突門あり、門に行馬有り、車騎は外に居り、勇力の鋭士は隠伏して処る。
敵人若至、使我輕卒合戰而佯走、令我城上立旌旗、撃鼙鼓、完爲守備。敵人以我爲守城、必薄我城下。發吾伏兵、以衝其内、或撃其外、三軍疾戰、或撃其前、或撃其後、勇者不得闘、輕者不及走。名曰突戰。敵人雖衆、其將必走。
敵人若し至らば、我が軽卒をして戦いを合わせて佯り走らしめ、我が城上に旌旗を立て、鼙鼓を撃ち、完く守備を為さしめよ。敵人、我を以て城を守ると為し、必ず我が城下に薄らん。吾が伏兵を発して、以て其の内を衝き、或いは其の外を撃ち、三軍疾く戦い、或いは其の前を撃ち、或いは其の後ろを撃たば、勇者も闘うを得ず、軽者も走るに及ばず。名づけて突戦と曰う。敵人衆しと雖も、其の将、必ず走らん。
武王曰、善哉。
武王曰く、善きかな。
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