六韜:敵強第四十五
武王問太公曰、引兵深入諸侯之地、與敵人衝軍相當、敵衆我寡、敵強我弱、敵人夜來、或攻吾左、或攻吾右、三軍震動、吾欲以戰則勝、以守則固。爲之奈何。
武王、太公に問うて曰く、兵を引いて深く諸侯の地に入り、敵人の衝軍と相当るに、敵は衆く我は寡く、敵は強く我は弱く、敵人夜来りて、或いは吾が左を攻め、或いは吾が右を攻め、三軍震動するとき、吾以て戦えば則ち勝ち、以て守れば則ち固からんことを欲す。之を為すこと奈何。
- ウィキソース「六韜」参照。
太公曰、如此者、謂之震寇。利以出戰、不可以守。選吾材士強弩車騎爲左右、疾撃其前、急攻其後、或撃其表、或撃其裏、其卒必亂、其將必駭。
太公曰く、此の如き者は、之を震寇と謂う。以て出て戦うに利あり、以て守る可からず。吾が材士、強弩、車騎を選びて左右と為し、疾く其の前を撃ち、急に其の後ろを攻め、或いは其の表を撃ち、或いは其の裏を撃たば、其の卒必ず乱れ、其の将必ず駭かん。
- 爲左右 … 底本では「爲之左右」に作るが、『直解』に従い改めた。
武王曰、敵人遠遮我前、急攻我後、斷我鋭兵、絶我材士、吾内外不得相聞、三軍擾亂、皆敗而走、士卒無闘志、將吏無守心、爲之奈何。
武王曰く、敵人遠く我が前を遮り、急に我が後ろを攻め、我が鋭兵を断ち、我が材士を絶ち、吾が内外相聞くことを得ず、三軍擾乱し、皆敗れて走り、士卒に闘志無く、将吏に守る心無くんば、之を為すこと奈何。
- 皆敗而走 … 底本では「皆散而走」に作るが、『直解』に従い改めた。
太公曰、明哉、王之問也。當明號審令。出我勇鋭冒將之士、人操炬火、二人同鼓、必知敵人所在、或撃其表、或撃其裏、微號相知、令之滅火、鼓音皆止、中外相應、期約皆當、三軍疾戰、敵必敗亡。
太公曰く、明なるかな、王の問いや。当に号を明らかにし令を審らかにすべし。我が勇鋭冒将の士を出し、人ごとに炬火を操り、二人同に鼓し、必ず敵人の在る所を知り、或いは其の表を撃ち、或いは其の裏を撃ち、微号して相知り、之をして火を滅し、鼓音皆止め、中外相応じ、期約皆当らしめ、三軍疾く戦わば、敵必ず敗亡せん。
武王曰、善哉。
武王曰く、善きかな。
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