六韜:守土第七
文王問太公曰、守土奈何。太公曰、無疏其親。無怠其衆。撫其左右、御其四旁、無借人國柄。借人國柄、則失其權。無掘壑而附丘。無舎本而治末。
文王、太公に問うて曰く、土を守ること奈何。太公曰く、其の親を疏んずる無かれ。其の衆を怠る無かれ。其の左右を撫し、其の四旁を御し、人に国柄を借す無かれ。人に国柄を借せば、則ち其の権を失う。壑を掘りて丘に附くる無かれ。本を舎てて末を治むる無かれ。
- ウィキソース「六韜」参照。
- 無疏其親 … 底本では「無䟽其親」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 無舎本 … 底本では「無舎夲」に作るが、『直解』に従い改めた。
日中必彗。操刀必割。執斧必伐。日中不彗、是謂失時。操刀不割、失利之期、執斧不伐、賊人將來。涓涓不塞、將爲江河。熒熒不救、炎炎奈何。兩葉不去、將用斧柯。
日中すれば必ず彗す。刀を操れば必ず割く。斧を執れば必ず伐る。日中して彗さざるは、是れを時を失うと謂う。刀を操って割かざれば、利の期を失い、斧を執って伐らざれば、賊人将に来らんとす。涓涓たるに塞がざれば、将に江河と為らんとす。熒熒たるに救わざれば、炎炎たるを奈何せん。両葉にして去らざれば、将に斧柯を用いんとす。
是故人君必從事於冨。不富無以爲仁。不施無以合親。疏其親則害。失其衆則敗。無借人利器。借人利器、則爲人所害而不終其世。
是の故に、人君は必ず事に富に従う。富まざれば以て仁を為す無し。施さざれば以て親を合する無し。其の親を疏んずれば則ち害あり。其の衆を失えば則ち敗る。人に利器を借す無かれ。人に利器を借さば、則ち人の害する所と為りて、其の世を終えず。
- 疏其親 … 底本では「䟽其親」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 不終其世 … 底本では「不終其正也」に作るが、『直解』に従い改めた。
文王曰、何謂仁義。太公曰、敬其衆、合其親。敬其衆則和、合其親則喜。是謂仁義之紀。無使人奪汝威。因其明、順其常。順者任之以德、逆者絶之以力。敬之勿疑。天下和服。
文王曰く、何をか仁義と謂う。太公曰く、其の衆を敬し、其の親を合す。其の衆を敬すれば則ち和し、其の親を合すれば則ち喜ぶ。是れを仁義の紀と謂う。人をして汝の威を奪わしむる無かれ。其の明に因り、其の常に順う。順う者は之に任ずるに徳を以てし、逆う者は之を絶つに力を以てす。之を敬して疑う勿かれ。天下和服せん。
- 文王曰 … 底本には「文」の字なし。
巻一 文韜 | |
文師第一 | 盈虚第二 |
国務第三 | 大礼第四 |
明伝第五 | 六守第六 |
守土第七 | 守国第八 |
上賢第九 | 挙賢第十 |
賞罰第十一 | 兵道第十二 |
巻二 武韜 | |
発啓第十三 | 文啓第十四 |
文伐第十五 | 順啓第十六 |
三疑第十七 |
巻三 竜韜 | |
王翼第十八 | 論将第十九 |
選将第二十 | 立将第二十一 |
将威第二十二 | 励軍第二十三 |
陰符第二十四 | 陰書第二十五 |
軍勢第二十六 | 奇兵第二十七 |
五音第二十八 | 兵徴第二十九 |
農器第三十 |
巻四 虎韜 | |
軍用第三十一 | 三陣第三十二 |
疾戦第三十三 | 必出第三十四 |
軍略第三十五 | 臨境第三十六 |
動静第三十七 | 金鼓第三十八 |
絶道第三十九 | 略地第四十 |
火戦第四十一 | 塁虚第四十二 |
巻五 豹韜 | |
林戦第四十三 | 突戦第四十四 |
敵強第四十五 | 敵武第四十六 |
烏雲山兵第四十七 | 烏雲沢兵第四十八 |
少衆第四十九 | 分険第五十 |
巻六 犬韜 | |
分合第五十一 | 武鋒第五十二 |
練士第五十三 | 教戦第五十四 |
均兵第五十五 | 武車士第五十六 |
武騎士第五十七 | 戦車第五十八 |
戦騎第五十九 | 戦歩第六十 |