六韜:軍略第三十五
武王問太公曰、引兵深入諸侯之地、遇深谿大谷險阻之水、吾三軍未得畢濟、而天暴雨、流水大至、後不得屬於前、無舟梁之備、又無水草之資、吾欲畢濟、使三軍不稽留。爲之奈何。
武王、太公に問うて曰く、兵を引きて深く諸侯の地に入り、深渓、大谷、険阻の水に遇い、吾が三軍未だ畢く済るを得ざるに、天暴かに雨ふり、流水大いに至り、後ろは前に属くことを得ず、舟梁の備え無く、又水草の資無きに、吾畢く済りて、三軍をして稽留せざらしめんと欲す。之を為すこと奈何。
- ウィキソース「六韜」参照。
- 無舟梁之備 … 底本では「無有舟梁之備」に作るが、『直解』に従い改めた。
太公曰、凡帥師將衆、慮不先設、器械不備、教不精信、士卒不習、若此不可以爲王者之兵也。
太公曰く、凡そ師を帥い衆を将いるに、慮り先ず設けず、器械備えず、教え精信ならず、士卒習わず、此の若きは以て王者の兵と為す可からざるなり。
- 精信 … 底本では「素信」に作るが、『直解』に従い改めた。
凡三軍有大事、莫不習用器械。若攻城圍邑則有轒轀臨衝。視城中則有雲梯飛樓。三軍行止則有武衝大櫓、前後拒守。
凡そ三軍に大事有れば、器械を習い用いざる莫し。若し城を攻め邑を囲むには、則ち轒轀、臨衝有り。城中を視るには、則ち雲梯、飛楼有り。三軍行止するには、則ち武衝、大櫓有りて、前後拒ぎ守る。
- 若 … 底本にこの字はないが、『直解』にあるので補った。
絶道遮街則有材士強弩、衞其兩旁。設營壘則有天羅武落行馬蒺藜。
道を絶ち街を遮るには、則ち材士、強弩有りて、其の両旁を衛る。営塁を設くるには、則ち天羅、武落、行馬、蒺藜有り。
晝則登雲梯遠望、立五色旌旗。夜則設雲火萬炬、撃雷皷、振鼙鐸、吹鳴笳。越溝壍則有飛橋轉關轆轤鉏鋙。濟大水則有天潢飛江。逆波上流則有浮海絶江。
昼は則ち雲梯に登りて遠く望み、五色の旌旗を立つ。夜は則ち雲火万炬を設け、雷鼓を撃ち、鼙鐸を振い、鳴笳を吹く。溝塹を越ゆるには、則ち飛橋、転関、轆轤、鉏鋙有り。大水を済るには、則ち天潢、飛江有り。波に逆い流れを上るには、則ち浮海、絶江有り。
- 旌旗 … 底本では「旗旌」に作るが、『直解』に従い改めた。
三軍用備、主將何憂。
三軍の用備わらば、主将何をか憂えん。
巻一 文韜 | |
文師第一 | 盈虚第二 |
国務第三 | 大礼第四 |
明伝第五 | 六守第六 |
守土第七 | 守国第八 |
上賢第九 | 挙賢第十 |
賞罰第十一 | 兵道第十二 |
巻二 武韜 | |
発啓第十三 | 文啓第十四 |
文伐第十五 | 順啓第十六 |
三疑第十七 |
巻三 竜韜 | |
王翼第十八 | 論将第十九 |
選将第二十 | 立将第二十一 |
将威第二十二 | 励軍第二十三 |
陰符第二十四 | 陰書第二十五 |
軍勢第二十六 | 奇兵第二十七 |
五音第二十八 | 兵徴第二十九 |
農器第三十 |
巻四 虎韜 | |
軍用第三十一 | 三陣第三十二 |
疾戦第三十三 | 必出第三十四 |
軍略第三十五 | 臨境第三十六 |
動静第三十七 | 金鼓第三十八 |
絶道第三十九 | 略地第四十 |
火戦第四十一 | 塁虚第四十二 |
巻五 豹韜 | |
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敵強第四十五 | 敵武第四十六 |
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少衆第四十九 | 分険第五十 |
巻六 犬韜 | |
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均兵第五十五 | 武車士第五十六 |
武騎士第五十七 | 戦車第五十八 |
戦騎第五十九 | 戦歩第六十 |