六韜：烏（う）雲（うん）山兵（さんぺい）第四十七

武王問太公曰、引兵深入諸侯之地、遇高山盤石、其上亭亭、無有草木、四面受敵、吾三軍恐懼、士卒迷惑、吾欲以守則固、以戰則勝。爲之奈何。

武（ぶ）王（おう）、太公（たいこう）に問（と）うて曰（いわ）く、兵（へい）を引（ひ）いて深（ふか）く諸侯（しょこう）の地（ち）に入（い）り、高山（こうざん）盤石（ばんせき）に遇（あ）い、其（そ）の上（うえ）は亭亭（ていてい）として、草木（そうもく）有（あ）る無（な）く、四（し）面（めん）に敵（てき）を受（う）け、吾（わ）が三軍（さんぐん）恐（きょう）懼（く）し、士（し）卒（そつ）迷惑（めいわく）するに、吾（われ）以（もっ）て守（まも）れば則（すなわ）ち固（かた）く、以（もっ）て戦（たたか）わば則（すなわ）ち勝（か）たんと欲（ほっ）す。之（これ）を為（な）すこと奈何（いかん）。

ウィキソース「六韜」参照。

太公曰、凡三軍處山之高、則爲敵所棲、處山之下、則爲敵所囚。既以被山而處、必爲烏雲之陳。

太公（たいこう）曰（いわ）く、凡（およ）そ三軍（さんぐん）、山（やま）の高（たか）きに処（お）れば、則（すなわ）ち敵（てき）の棲（す）ます所（ところ）と為（な）り、山（やま）の下（ひく）きに処（お）れば、則（すなわ）ち敵（てき）の囚（とら）うる所（ところ）と為（な）る。既（すで）に以（もっ）て山（やま）を被（こうむ）りて処（お）れば、必（かなら）ず烏（う）雲（うん）の陣（じん）を為（つく）れ。

烏雲之陳、陰陽皆備。或屯其陰、或屯其陽。處山之陽、備山之陰、處山之陰、備山之陽。處山之左、備山之右、處山之右、備山之左。敵所能陵者、兵備其表、衢道通谷、絶以武車、高置旌旗、謹勅三軍、無使敵人知吾之情。是謂山城。

烏（う）雲（うん）の陣（じん）は、陰陽（いんよう）皆（みな）備（そな）わる。或（ある）いは其（そ）の陰（いん）に屯（たむろ）し、或（ある）いは其（そ）の陽（よう）に屯（たむろ）す。山（やま）の陽（よう）に処（お）れば、山（やま）の陰（いん）に備（そな）え、山（やま）に陰（いん）に処（お）れば、山（やま）の陽（よう）に備（そな）う。山（やま）の左（ひだり）に処（お）れば、山（やま）の右（みぎ）に備（そな）え、山（やま）の右（みぎ）に処（お）れば、山（やま）の左（ひだり）に備（そな）う。敵（てき）の能（よ）く陵（しの）ぐ所（ところ）の者（もの）は、兵（へい）其（そ）の表（おもて）に備（そな）え、衢（く）道（どう）通谷（つうこく）は、絶（た）つに武（ぶ）車（しゃ）を以（もっ）てし、高（たか）く旌（せい）旗（き）を置（お）き、謹（つつし）んで三軍（さんぐん）に勅（ちょく）し、敵人（てきじん）をして吾（われ）の情（じょう）を知（し）らしむること無（な）かれ。是（こ）れを山（さん）城（じょう）と謂（い）う。

行列已定、士卒已陳、法令已行、奇正已設、各置衝陳於山之表、便兵所處、乃分車騎爲烏雲之陳、三軍疾戰、敵人雖衆、其將可擒。

行列（こうれつ）已（すで）に定（さだ）まり、士（し）卒（そつ）已（すで）に陣（じん）し、法令（ほうれい）已（すで）に行（おこな）われ、奇（き）正（せい）已（すで）に設（もう）け、各〻（おのおの）衝（しょう）陣（じん）を山（やま）の表（おもて）に置（お）き、兵（へい）の処（お）る所（ところ）を便（べん）にし、乃（すなわ）ち車（しゃ）騎（き）を分（わか）ちて烏（う）雲（うん）の陣（じん）を為（つく）り、三軍（さんぐん）疾（と）く戦（たたか）わば、敵人（てきじん）衆（おお）しと雖（いえど）も、其（そ）の将（しょう）、擒（とりこ）にす可（べ）し。

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