六韜:火戦第四十一
武王問太公曰、引兵深入諸侯之地、遇深草蓊穢、周吾軍前後左右、三軍行數百里、人馬疲倦休止、敵人因天燥疾風之利、燔吾上風、車騎鋭士、堅伏吾後、三軍恐怖、散亂而走。爲之奈何。
武王、太公に問うて曰く、兵を引いて深く諸侯の地に入りて、深草蓊穢として、吾が軍の前後左右を周るに遇い、三軍行くこと数百里、人馬疲倦して休止するに、敵人、天燥疾風の利に因り、吾が上風を燔き、車騎鋭士、堅く吾が後ろに伏せば、三軍恐怖し、散乱して走らん。之を為すこと奈何。
- ウィキソース「六韜」参照。
太公曰、若此者、則以雲梯飛樓、遠望左右、謹察前後、見火起、即燔吾前而廣延之、又燔吾後。敵人苟至、即引軍而却、按黒地而堅處。
太公曰く、此の若き者は、則ち雲梯飛楼を以て、遠く左右を望み、謹んで前後を察し、火の起るを見ば、即ち吾が前を燔きて広く之を延べ、又吾が後ろを燔け。敵人苟くも至らば、即ち軍を引いて却き、黒地を按じて堅く処れ。
- 苟 … 底本では「若」に作るが、『直解』に従い改めた。
敵人之來、猶在吾後、見火起、必遠走。吾按黒地而處、強弩材士、衛吾左右、又燔吾前後。若此則敵人不能害我。
敵人の来る、猶お吾が後ろに在り、火の起るを見ば、必ず遠く走らん。吾、黒地を按じており、強弩材士、吾が左右を衛り、又吾が前後を燔け。此の若くならば、則ち敵人、我を害すること能わず。
- 遠 … 底本では「還」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 敵人 … 底本では「敵」に作るが、『直解』に従い改めた。
武王曰、敵人燔吾左右、又燔吾前後、煙覆吾軍、其大兵按黒地而起、爲之奈何。
武王曰く、敵人、吾が左右を燔き、又吾が前後を燔き、煙、吾が軍を覆い、其の大兵、黒地を按じて起らば、之を為すこと奈何。
- 煙 … 『直解』では「烟」に作る。
太公曰、若此者、爲四武衝陳、強弩翼吾左右。其法無勝、亦無負。
太公曰く、此の若き者は、四武の衝陣を為り、強弩、吾が左右を翼けよ。其の法、勝つこと無くとも、亦た負くること無からん。
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