六韜:分険第五十
武王問太公曰、引兵深入諸侯之地、與敵人相遇於險阨之中、吾左山而右水、敵右山而左水、與我分險相拒、吾欲以守則固、以戰則勝。爲之奈何。
武王、太公に問うて曰く、兵を引いて深く諸侯の地に入り、敵人と険阨の中に相遇い、吾は山を左にして水を右にし、敵は山を右にして水を左にし、我と険を分ちて相拒ぐに、吾以て守れば則ち固く、以て戦えば則ち勝たんと欲す。之を為すこと奈何。
- ウィキソース「六韜」参照。
- 吾欲以守則固 … 底本では「各欲以守則固」に作るが、『直解』に従い改めた。
太公曰、處山之左、急備山之右。處山之右、急備山之左。險有大水、無舟楫者、以天潢濟吾三軍。已濟者、亟廣吾道、以便戰所。以武衝爲前後、列其強弩、令行陳皆固。衢道谷口、以武衝絶之、高置旌旗。是謂軍城。
太公曰く、山の左に処れば、急に山の右に備えよ。山の右に処れば、急に山の左に備えよ。険の大水有りて、舟楫無きは、天潢を以て吾が三軍を済せ。已に済れる者は、亟かに吾が道を広め、以て戦所を便にせよ。武衝を以て前後と為し、其の強弩を列ね、行陣をして皆固からしめよ。衢道、谷口は、武衝を以て之を絶ち、高く旌旗を置け。是れを軍城と謂う。
- 軍城 … 底本では「車城」に作るが、『直解』に従い改めた。
凡險戰之法、以武衝爲前、大櫓爲衞。材士、強弩、翼吾左右、三千人爲一屯、必置衝陳、便兵所處、左軍以左、右軍以右、中軍以中、並攻而前、已戰者、還歸屯所、更戰更息、必勝乃已。
凡そ険戦の法は、武衝を以て前と為し、大櫓を衛と為し、材士、強弩、吾が左右を翼け、三千人を一屯と為し、必ず衝陣を置き、兵の処る所を便にし、左軍は以て左し、右軍は以て右し、中軍は以て中し、並びに攻めて前み、已に戦える者は、屯所に還帰し、更〻戦い更〻息い、必ず勝ちて乃ち已む。
武王曰、善哉。
武王曰く、善きかな。
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