六韜:農器第三十
武王問太公曰、天下安定、國家無事、戰攻之具、可無修乎。守禦之備、可無設乎。
武王、太公に問うて曰く、天下安定し、国家事無ければ、戦攻の具、修むる無かる可きか。守禦の備え、設くる無かる可きか。
- ウィキソース「六韜」参照。
- 無事 … 『直解』では「無爭」に作る。
太公曰、戰攻守禦之具、盡在於人事。耒耜者、其行馬蒺藜也。馬牛車輿者、其營壘蔽櫓也。鋤耰之具、其矛戟也。蓑薛簦笠者、其甲冑干櫓也。钁鍤斧鋸杵臼、其攻城器也。牛馬所以轉輸糧也。雞犬其伺候也。婦人織紝、其旌旗也。丈夫平壤、其攻城也。
太公曰く、戦攻守禦の具は、尽く人事に在り。耒耜は、其の行馬、蒺藜なり。馬牛車輿は、其の営塁蔽櫓なり。鋤耰の具は、其の矛戟なり。蓑薛簦笠は、其の甲冑干櫓なり。钁鍤、斧鋸、杵臼は、其の城を攻むる器なり。牛馬は、糧を転輸する所以なり。雞犬は其の伺候なり。婦人の織紝は、其の旌旗なり。丈夫の壌を平らぐるは、其の城を攻むるなり。
- 蓑薛簦笠者 … 『直解』には「者」の字なし。
- 干櫓 … 底本では「干楯」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 糧也 … 底本では「糧用也」に作るが、『直解』に従い改めた。
春鏺草棘、其戰車騎也。夏耨田疇、其戰歩兵也。秋刈禾薪、其糧食儲備也。冬實倉廩、其堅守也。
春、草棘を鏺るは、其の車騎を戦わしむるなり。夏、田疇を耨るは、其の歩兵を戦わしむるなり。秋、禾薪を刈るは、其の糧食の儲備なり。冬、倉廩を実たすは、其の堅守なり。
田里相伍、其約束符信也。里有吏、官有長、其將帥也。里有周垣、不得相過、其隊分也。輸粟取芻、其廩庫也。春秋治城郭、修溝渠、其塹壘也。
田里相伍するは、其の約束符信なり。里に吏有り、官に長有るは、其の将帥なり。里に周垣有り、相過ぐるを得ざるは、其の隊分なり。粟を輸し芻を取るは、其の廩庫なり。春秋に城郭を治め、溝渠を修むるは、其の塹塁なり。
- 取芻 … 底本では「収芻」に作るが、『直解』に従い改めた。
故用兵之具、盡於人事也。善爲國者、取於人事。故必使遂其六畜、闢其田野、究其處所。丈夫治田有畝數。婦人織紝、有尺度。是富國強兵之道也。
故に兵を用うるの具は、人事に尽きたり。善く国を為むる者は、人事に取る。故に必ず其の六畜を遂げ、其の田野を闢き、其の処所を究めしむ。丈夫の田を治むるに畝数有り。婦人の織紝に尺度有り。是れ国を富まし兵を強くするの道なり。
- 盡於 … 底本では「盡在於」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 究其處所 … 底本では「安其處所」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 是富國 … 『直解』では「其富國」に作る。
武王曰、善哉。
武王曰く、善いかな。
巻一 文韜 | |
文師第一 | 盈虚第二 |
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守土第七 | 守国第八 |
上賢第九 | 挙賢第十 |
賞罰第十一 | 兵道第十二 |
巻二 武韜 | |
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文伐第十五 | 順啓第十六 |
三疑第十七 |
巻三 竜韜 | |
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選将第二十 | 立将第二十一 |
将威第二十二 | 励軍第二十三 |
陰符第二十四 | 陰書第二十五 |
軍勢第二十六 | 奇兵第二十七 |
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農器第三十 |
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