- 清奇 … 詩風が清新で非凡なこと。
- 流・舟・幽・悠・收・秋(平声尤韻)。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
娟娟羣松、下有漪流。
娟娟たる群なす松、下に漪流有り。
- 娟娟 … 美しい様子。ここでは景色の美しさを形容する言葉。杜甫「小寒食、舟中の作」に「娟娟として戯蝶は間幔を過ぎ、片片として軽鷗は急湍を下る」(娟娟戲蝶過閒幔、片片輕鷗下急湍)とある。ウィキソース「小寒食舟中作」参照。
- 群松 … 松林。
- 漪流 … 小さな波が起こって川が流れている様子。「漪」は、さざ波。『文心雕龍』定勢篇に「譬えば激水は漪たず、槁木は陰無きがごとし」(譬激水不漪、槁木無陰)とある。ウィキソース「文心雕龍/定勢」参照。
晴雪滿汀、隔溪漁舟。
晴雪汀に満ち、渓を隔てて漁舟あり。
- 晴雪 … 雪が降ったあとに空が晴れあがること。雪晴れ。銭起「和王員外晴雪早朝」に「紫微の晴雪恩光を帯び、仗を繞りて偏えに随う鴛鷺の行」(紫微晴雪帶恩光、繞仗偏隨鴛鷺行)とある。ウィキソース「和王員外雪晴早朝」参照。
- 汀 … 水辺。岸辺。『楚辞』九歌・湘夫人に「汀洲の杜若を搴り、将に以て遠き者に遺らんとす」(搴汀洲兮杜若、將以遺兮遠者)とある。説郛本では「竹」に作るが、全唐詩本、二家詩品本等に従い「汀」に改めた。なお、二家詩品本には「汀一本作竹」との注がある。
- 渓 … 谷川。
- 漁舟 … 漁をする小舟。
可人如玉、歩屧尋幽。
可人玉の如く、歩屧して幽を尋ぬ。
- 可人 … よい人物。見どころのある人物。『礼記』雑記下に「其の与に遊ぶ所辟なればなり、可なる人なり」(其所與遊辟也、可人也)とある。ウィキソース「禮記/雜記下」参照。
- 玉 … 白玉。
- 歩屧 … 歩いて行くこと。「屧」は、木で作った履き物。
- 幽 … 奥深く静かなところ。杜甫「江村」に「清江一曲村を抱いて流る、長夏江村事事幽なり」(清江一曲抱村流、長夏江村事事幽)とある。ウィキソース「江村」参照。
載瞻載止、空碧悠悠。
載ち瞻載ち止まり、空碧悠悠たり。
- 載 … 「載~載…」の形で「すなわち~すなわち…」と読み、「~しながら…する」と訳す。二つの動作を同時に行う意を示す。『詩経』小雅・采薇の詩に「道を行くこと遅遅たり、載ち渇し載ち飢う」(行道遲遲、載渇載飢)とある。ウィキソース「詩經/采薇」参照。
- 瞻 … 眺める。二家詩品本では「行」に作り、「行一本作瞻」との注がある。
- 止 … 立ち止まる。
- 空碧 … 大空が青々としている様子。
- 悠悠 … 果てしなくゆったりと広がっているさま。『詩経』王風・黍離の詩に「悠悠たる蒼天、此れ何人ぞや」(悠悠蒼天、此何人哉)とある。ウィキソース「詩經/黍離」参照。
神出古異、淡不可收。
神古異を出し、淡として収む可からず。
- 神 … 顔色。顔つき。神情。ここでは清奇なる詩風の面持ち。
- 古異 … 古風で気品が高く、非常に優れていること。「古」は、高古。「異」は、奇特。
- 淡不 … 『詩品集解』では「澹不」に作る。二家詩品本では「不載」に作る。
- 淡 … 恬淡。
- 不可収 … 収めることができない。ここでは描き出す方法がない。
如月之曙、如氣之秋。
月の曙の如く、気の秋の如し。
- 如月之曙、如気之秋 … 明け方の月のように清らかではっきりしており、秋の気のようにさわやかで気持ちがよい。ここは、本来は「如曙之月、如秋之気」とするところであるが、押韻(秋が韻字、平声尤韻)の関係で「如月之曙、如気之秋」としている。