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二十四詩品 十六 せい

  • 清奇 … 詩風が清新で非凡なこと。
  • 流・舟・幽・悠・收・秋(平声尤韻)。
  • ウィキソース「二十四詩品」参照。
娟娟羣松、下有漪流。
娟娟けんけんたるむれなすまつしもりゅうり。
  • 娟娟 … 美しい様子。ここでは景色の美しさを形容する言葉。杜甫「しょうかんしょく舟中しゅうちゅうさく」に「娟娟けんけんとしてちょう間幔かんまんぎ、片片へんぺんとして軽鷗けいおうきゅうたんくだる」(娟娟戲蝶過閒幔、片片輕鷗下急湍)とある。ウィキソース「小寒食舟中作」参照。
  • 群松 … 松林。
  • 漪流 … 小さな波が起こって川が流れている様子。「漪」は、さざ波。『文心雕龍』定勢篇に「たとえば激水げきすいさざなみたたず、槁木こうぼくひかげきがごとし」(譬激水不漪、槁木無陰)とある。ウィキソース「文心雕龍/定勢」参照。
晴雪滿汀、隔溪漁舟。
晴雪せいせつなぎさち、たにへだててぎょしゅうあり。
  • 晴雪 … 雪が降ったあとに空が晴れあがること。雪晴れ。銭起「和王員外晴雪早朝」に「紫微しび晴雪せいせつ恩光おんこうび、じょうめぐりてひとえにしたがえんこう」(紫微晴雪帶恩光、繞仗偏隨鴛鷺行)とある。ウィキソース「和王員外雪晴早朝」参照。
  • 汀 … 水辺。岸辺。『楚辞』九歌・湘夫人に「ていしゅうじゃくり、まさもっとおものおくらんとす」(搴汀洲兮杜若、將以遺兮遠者)とある。説郛本では「竹」に作るが、全唐詩本、二家詩品本等に従い「汀」に改めた。なお、二家詩品本には「汀一本作竹」との注がある。
  • 渓 … 谷川。
  • 漁舟 … 漁をする小舟。
可人如玉、歩屧尋幽。
じんぎょくごとく、しょうしてゆうたずぬ。
  • 可人 … よい人物。見どころのある人物。『礼記』雑記下に「ともあそところへきなればなり、なるひとなり」(其所與遊辟也、可人也)とある。ウィキソース「禮記/雜記下」参照。
  • 玉 … はくぎょく
  • 歩屧 … 歩いて行くこと。「屧」は、木で作った履き物。
  • 幽 … 奥深く静かなところ。杜甫「江村」に「清江せいこういっきょくむらいだいてながる、ちょう江村こうそん事事じじゆうなり」(清江一曲抱村流、長夏江村事事幽)とある。ウィキソース「江村」参照。
載瞻載止、空碧悠悠。
すなわすなわとどまり、空碧くうへき悠悠ゆうゆうたり。
  • 載 … 「載~載…」の形で「すなわち~すなわち…」と読み、「~しながら…する」と訳す。二つの動作を同時に行う意を示す。『詩経』小雅・さいの詩に「みちくこと遅遅ちちたり、すなわかっすなわう」(行道遲遲、載渇載飢)とある。ウィキソース「詩經/采薇」参照。
  • 瞻 … 眺める。二家詩品本では「行」に作り、「行一本作瞻」との注がある。
  • 止 … 立ち止まる。
  • 空碧 … 大空が青々としている様子。
  • 悠悠 … 果てしなくゆったりと広がっているさま。『詩経』王風・しょの詩に「悠悠ゆうゆうたる蒼天そうてん何人なにびとぞや」(悠悠蒼天、此何人哉)とある。ウィキソース「詩經/黍離」参照。
神出古異、淡不可收。
しん古異こいいだし、たんとしておさからず。
  • 神 … 顔色。顔つき。神情。ここでは清奇なる詩風の面持ち。
  • 古異 … 古風で気品が高く、非常に優れていること。「古」は、高古。「異」は、奇特。
  • 淡不 … 『詩品集解』では「澹不」に作る。二家詩品本では「不載」に作る。
  • 淡 … 恬淡。
  • 不可収 … 収めることができない。ここでは描き出す方法がない。
如月之曙、如氣之秋。
つきあけぼのごとく、あきごとし。
  • 如月之曙、如気之秋 … 明け方の月のように清らかではっきりしており、秋の気のようにさわやかで気持ちがよい。ここは、本来は「如曙之月、如秋之気」とするところであるが、押韻(秋が韻字、平声尤韻)の関係で「如月之曙、如気之秋」としている。
一 雄渾 二 冲淡
三 繊穠 四 沈著
五 高古 六 典雅
七 洗煉 八 勁健
九 綺麗 十 自然
十一 含蓄 十二 豪放
十三 精神 十四 縝密
十五 疎野 十六 清奇
十七 委曲 十八 実境
十九 悲概 二十 形容
二十一 超詣 二十二 飄逸
二十三 曠達 二十四 流動