和王員外晴雪早朝(銭起)
和王員外晴雪早朝
王員外の「晴雪早朝」に和す
王員外の「晴雪早朝」に和す
- 七言律詩。光・行・香・陽・郎(平声陽韻)。
- 『全唐詩』巻239所収。ウィキソース「和王員外雪晴早朝」参照。
- 王 … 姓。
- 員外 … 官名。長官(郎中)の補佐役。員外郎。
- 晴雪 … 雪が降ったあとに空が晴れあがること。雪晴れ。『全唐詩』では「雪晴」に作る。
- 早朝 … 朝早く参内すること。
- 和 … ここでは岑参の「和祠部王員外雪後早朝即事」と同じく、王某が「晴雪早朝」と題して即興的に詠じた詩に、作者が唱和したもの。
- 銭起 … 710?(722?)~780?。中唐の詩人。呉興(浙江省呉興区)の人。字は仲文。天宝十載(751)、進士に及第。校書郎から藍田県(陝西省藍田県)の県尉を経て、考功郎中に進み、太清宮使・翰林学士に至った。大暦十才子の一人。郎士元とともに「銭郎」と称された。『銭考功集』十巻がある。ウィキペディア【銭起】参照。
紫微晴雪帶恩光
紫微の晴雪 恩光を帯び
- 紫微 … もとは北斗星の北東にある十五の星の名。伝説では、その一つが天の軸にあたり、天帝の住む宮殿とされる。転じて、王宮のこと。ここでは天子の宮殿を指す。紫微宮・紫微星・紫垣・紫宮とも。『晋書』天文志に「紫宮垣の十五星、其の西番七つ、東番八つ、北斗の北に在り。一に紫微と曰う。大帝の坐なり。天子の常居なり。命を主り度を主るなり」(紫宮垣十五星、其西番七、東番八、在北斗北。一曰紫微。大帝之坐也。天子之常居也。主命主度也)とある。ウィキソース「晉書/卷011」参照。
- 晴雪 … 雪が降ったあとに空が晴れあがること。雪晴れ。
- 恩光 … 恵みの光。朝日の光と天子の恩徳とをかけている。
繞仗偏隨鴛鷺行
仗を繞りて偏えに随う 鴛鷺の行
- 仗 … 天子の儀仗。
- 鴛鷺行 … 参朝する百官の行列にたとえる。「鴛」はおしどり。「鷺」はさぎ。
長信月留寧避曉
長信 月留まりて寧ぞ暁を避けん
- 長信 … 漢の宮殿の名。長信宮。皇太后の居所。
- 月留 … 積もった雪の光を月光にたとえたもの。
- 寧避暁 … 朝の太陽を避けようともしない。「寧」は反語を示す言葉。「いずくんぞ」「なんぞ」と読み、「どうして~であろうか」「まさか~ではあるまい」と訳す。
宜春花滿不飛香
宜春 花満つるも香を飛ばさず
- 宜春 … 漢の御苑の名。宜春苑。
- 花満 … 積もった雪を花にたとえたもの。
- 不飛香 …香りだけは放っていない。
獨看積素凝清禁
独り看る 積素の清禁に凝るを
- 積素 … 降り積もった雪。「素」は白色、雪のこと。
- 清禁 … 清らかな宮中。「禁」は禁裏、禁中。
已覺輕寒讓太陽
已に覚ゆ 軽寒の太陽に譲るを
- 軽寒 … うすら寒さ。
題柱盛名兼絶唱
題柱の盛名 絶唱を兼ぬ
- 題柱 … 柱に詩や文を書きしるすこと。後漢の田鳳という人が尚書郎になったとき、容姿がはなはだ端正であったため、霊帝が感心して、賞讃の言葉を宮殿の柱に書きつけた故事に基づく。
- 盛名 … 立派な名声。
- 絶唱 … 絶妙な詩。
風流誰繼漢田郎
風流誰か継がん 漢の田郎
- 風流 … ここでは容姿・品格ともにすぐれていること。
- 漢田郎 … 田鳳を指す。
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