二十四詩品 二十一 超詣
- 超詣 … 詩風が超俗で造詣が深いこと。
- 微・歸・非・違・暉・稀(平声微韻)。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
匪神之靈、匪幾之微。
神の霊に匪ず、幾の微に匪ず。
- 神之霊 … 心の働きが敏いこと。「神」は、精神。心。「霊」は、形容詞。敏い。賢い。
- 匪 … ~でない。否定を表す言葉。「非」と同義。
- 幾之微 … 機智の働きが精緻なこと。「幾」は、機智。二家詩品本では「機」に作る。『列子』仲尼篇に「大夫は斉・魯の機多きを聞かずや」(大夫不聞齊魯之多機乎)とある。ウィキソース「列子/仲尼篇」参照。「微」は、精緻。緻密。
如將白雲、清風與歸。
白雲と、清風と与に帰るが如し。
遠引若至、臨之已非。
遠く引くこと至るが若きも、之を臨めば已に非なり。
- 遠引 … 遠くまで行くこと。
- 若至 … 超詣なる境地に到達したように感じられるが。「若」は、説郛本では「莫」に作るが、全唐詩本、二家詩品本等に従い改めた。
- 臨之 … 超詣なる境地を上から眺めると。「臨」は、高い所から下を見ること。『荀子』勧学篇に「深谿に臨まざれば、地の厚きことを知らざるなり」(不臨深谿、不知地之厚也)とある。ウィキソース「荀子/勸學篇」参照。
- 已非 … もはや超詣なる境地ではない。
少有道氣、終與俗違。
少きより道気を有たば、終に俗と違わん。
- 少 … 若い頃から。
- 道気 … 超俗の気質。「気」は、二家詩品本では「契」に作り、「契當作氣」との注がある。
- 終 … ついに。とうとう。
- 俗違 … 世俗に背く。世俗を超越すること。脱俗。超俗。「違」は、違背する。『孟子』梁恵王篇上に「農時を違えずんば、穀勝げて食う可からず」(不違農時、穀不可勝食也)とある。ウィキソース「孟子/梁惠王上」参照。
亂山喬木、碧苔芳暉。
乱山の喬木、碧苔の芳暉。
- 乱山 … 高さが不揃いの多くの山々。
- 喬木 … 高い樹木。「喬」は、二家詩品本では「高」に作り、「高一本作喬」との注がある。
- 碧苔 … 真っ青な苔。
- 芳暉 … 春の日の美しい輝き。
誦之思之、其聲愈稀。
之を誦し之を思えば、其の声愈〻稀なり。
- 誦之 … 詩を朗唱する。詩を吟誦する。
- 思之 … 前句(乱山喬木、碧苔芳暉)の風景を思い浮かべる。
- 其声 … 詩を朗唱したときの余韻。
- 愈 … だんだんと。
- 稀 … 微かに聞こえる様子。希微。
一 雄渾 | 二 冲淡 |
三 繊穠 | 四 沈著 |
五 高古 | 六 典雅 |
七 洗煉 | 八 勁健 |
九 綺麗 | 十 自然 |
十一 含蓄 | 十二 豪放 |
十三 精神 | 十四 縝密 |
十五 疎野 | 十六 清奇 |
十七 委曲 | 十八 実境 |
十九 悲概 | 二十 形容 |
二十一 超詣 | 二十二 飄逸 |
二十三 曠達 | 二十四 流動 |