二十四詩品 十八 實境
- 実境 … 詩風が誠実で、ありのままの境地を表現していること。
- 深・心・陰・琴・尋・音(平声侵韻)。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
取語甚直、計思匪深。
語を取ること甚だしく直にし、思を計ること深きに匪ざれ。
- 取語 … 言葉を選び取ること。
- 直 … 素直で飾り気がないさま。率直。
- 計思 … 詩の構想を練ること。
- 匪深 … 難解にならないようにせよ。「深」は、奥深くて難解であること。
- 匪 … ~でない。否定を表す言葉。「非」と同義。
忽逢幽人、如見道心。
忽ち幽人に逢い、道心を見るが如くに。
- 忽 … 忽然。にわかに。突然。
- 幽人 … 俗世間を離れて隠遁生活をしている人。幽子。
- 道心 … 道の本心。道の精神。「道」は、自然法則。道理。『荀子』天論篇に「道を脩めて貳わざれば、則ち天も禍すること能わず」(脩道而不貳、則天不能禍)とある。ウィキソース「荀子/天論篇」参照。
清澗之曲、碧松之陰。
清澗の曲、碧松の陰。
一客荷樵、一客聽琴。
一客樵を荷い、一客琴を聴く。
- 一客荷樵 … 一人の木こりが薪を背負ってくる。「一客」は、一人の旅人。ここでは木こりを指す。「樵」は、たきぎ。
- 一客聴琴 … 一人の詩人が琴の音を聴いている。「一客」は、一人の旅人。ここでは詩人を指す。
情性所至、妙不自尋。
情性の至る所、妙は自らは尋ねず。
- 情性 … 思想。感情。性格。『文心雕龍』体性篇に「英華を吐納するは、情性に非ざるは莫し」(吐納英華、莫非情性)とある。ウィキソース「文心雕龍/體性」参照。
- 妙 … 実境なる境地の絶妙なさま。
- 不自尋 … 自分からは意識して求めない。
遇之自天、泠然希音。
之に遇うこと天よりなれば、泠然たる希音たり。
- 遇之 … 実境なる境地に巡り合うこと。
- 自天 … 自然にそのようになること。
- 泠然 … 軽やかなさま。「冷然」と同じ。『荘子』逍遥遊篇に「夫の列子は風に御して行き、泠然として善し」(夫列子御風而行、泠然善也)とある。ウィキソース「莊子/逍遙遊」参照。ここでは清新で美しいさま。「泠」は、全唐詩本および二家詩品本では「冷」に作る。
- 希音 … 微かな音。微妙な音。
一 雄渾 | 二 冲淡 |
三 繊穠 | 四 沈著 |
五 高古 | 六 典雅 |
七 洗煉 | 八 勁健 |
九 綺麗 | 十 自然 |
十一 含蓄 | 十二 豪放 |
十三 精神 | 十四 縝密 |
十五 疎野 | 十六 清奇 |
十七 委曲 | 十八 実境 |
十九 悲概 | 二十 形容 |
二十一 超詣 | 二十二 飄逸 |
二十三 曠達 | 二十四 流動 |