二十四詩品 十五 疎野
- 疎野 … 詩風が率直であること。「粗野」と同じ。ただし、無作法・下品の意ではない。
- 覊・期・詩・時・爲・之(平声支韻)。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
惟性所宅、眞取弗覊。
惟だ性の宅する所、真取して羈がれず。
- 惟 … ただ。ひたすら。
- 性 … 性情。生まれつきの性質。
- 宅 … ここでは基づく。根拠とする。
- 真取 … 純粋に詩の素材を取る。「真」は、天真。
- 覊 … 本来は、馬をつなぎとめるため、頭部にかけてつけた綱。おもがい。曹植「白馬篇」に「白馬金羈を飾り、連翩として西北に馳す」(白馬飾金羈、連翩西北馳)とある。ウィキソース「白馬篇 (曹植)」参照。ここでは拘束するもの。
控物自富、與率爲期。
物を控えて自ら富ましめ、率を与て期と為さん。
- 物 … 万物。
- 控 … 引き止める。ここでは心の中にしまう。二家詩品本では「拾」に作り、「拾一本作控」との注がある。
- 富 … 詩の題材を豊かにする。
- 率 … 率直。
- 与 … もって。「以」と同じ。
- 期 … 希望する。期待する。『韓非子』五蠹篇に「修古を期せず、常行に法らず」(不期修古、不法常行)とある。ウィキソース「韓非子/五蠹」参照。
築室松下、脱帽看詩。
室を松下に築き、帽を脱ぎて詩を看る。
- 築室 … 庵を結ぶこと。「室」は、草庵。あばら屋。
- 松下 … 松林の中。
- 脱帽 … 帽子を取ること。「帽」は、帽子。頭巾。官職から離れ、のんびりくつろいでいる様子を指す。「脱巾」と同じ。李白「扶風豪士の歌」に「吾が帽を脱し、君に向って笑う。君の酒を飲み、君の為に吟ず」(脫吾帽、向君笑。飮君酒、爲君吟)とある。ウィキソース「扶風豪士歌」参照。
- 看詩 … 詩を読むこと。
但知旦暮、不辨何時。
但だ旦暮を知るのみにして、何なる時かを弁ぜず。
- 但 … 「ただ」と読み、「ただ~だけ」と訳す。限定の意を示す。
- 旦暮 … 夜明けと日暮れ。朝夕。
- 何時 … 今がどういう時か。
- 不弁 … 物事を弁別しない。見分けることをしない。
倘然適意、豈必有爲。
倘然として意に適えば、豈に必ずしも為す有らんや。
- 倘然 … 本来の意味は、あきれてぼんやりするさま。ここでは自由自在であるさま。拘束されないこと。
- 適意 … 自分の心に適うこと。
- 豈 … 「あに~ん(や)」と読み、「どうして~しようか、いやしない」と訳す。反語の意を示す。
- 有為 … 物事を行うこと。ここでは詩の言葉を飾ること。
若其天放、如是得之。
其の天放の若くし、是の如くんば之を得ん。
一 雄渾 | 二 冲淡 |
三 繊穠 | 四 沈著 |
五 高古 | 六 典雅 |
七 洗煉 | 八 勁健 |
九 綺麗 | 十 自然 |
十一 含蓄 | 十二 豪放 |
十三 精神 | 十四 縝密 |
十五 疎野 | 十六 清奇 |
十七 委曲 | 十八 実境 |
十九 悲概 | 二十 形容 |
二十一 超詣 | 二十二 飄逸 |
二十三 曠達 | 二十四 流動 |