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二十四詩品 五 こう

  • 高古 … 詩風が高尚で古風であること。
  • 蓉・蹤・從・鐘・封・宗(平声冬韻)。
  • ウィキソース「二十四詩品」参照。
畸人乘眞、手把芙蓉。
じんしんり、ようつ。
  • 畸人 … 風変わりな人。偏っている人。俗世間に合わない人。『荘子』大宗師篇に「子貢曰く、敢えて畸人を問う。曰く、畸人とは、人ににして天にひとし」(子貢曰、敢問畸人。曰、畸人者、畸於人而侔於天)とある。「侔」は、等しい。肩を並べること。ウィキソース「莊子/大宗師」参照。
  • 乗真 … 雲気に乗って天高く上昇していくこと。風に乗って天空へ昇っていくこと。ぎょ
  • 手把芙蓉 … はすの花を手に持つ。「把」は、握って持つ。李白の「古風五十九首 其十九」に「しゅようり、きょして太清たいせいむ」(素手把芙蓉、虛步躡太清)とある。ウィキソース「古風 (西嶽蓮花山)」参照。
汎彼浩劫、窅然空蹤。
浩劫こうこううかべば、窅然ようぜんとしてむなしきあとあり。
  • 汎彼浩劫 … 非常に長い時間にわたる大災害を乗り越えれば。『詩経』邶風はいふうはくしゅうの詩に「へんたるはくしゅうへんとしてながる」(汎彼柏舟、亦汎其流)とある。ウィキソース「詩經/柏舟」参照。
  • 浩劫 … 非常に長い時間にわたる大きな災い。
  • 汎 … 浮かぶ。漂う。ここでは渡る。乗り越える。
  • 窅然 … ぼんやりとして遠く霞んでいるさま。李白の「山中問答」に「とうりゅうすい 窅然ようぜんとしてる、べつてん人間じんかんあらざるり」(桃花流水窅然去、別有天地非人間)とある。ウィキソース「山中問荅」参照。
  • 蹤 … 足跡。説郛本および二家詩品本では「縦」に作るが、『詩品集解』に従い改めた。
月出東斗、好風相從。
つきとうづれば、好風こうふうあいしたがう。
  • 東斗 … 東方の斗宿。「斗宿」は、二十八宿の一つ。ひつきぼし。ウィキペディア【斗宿】参照。
  • 好風 … こころよい風。
太華夜碧、人聞清鐘。
たいよるあおくして、ひとせいしょうく。
  • 太華 … 山の名。華山。陝西省華陰市の南にある。五岳の一つ。ウィキペディア【華山】参照。
  • 清鐘 … 澄んだ鐘の音。
虛佇神素、脱然畦封。
むなしくしんたもてば、畦封けいふう脱然だつぜんたり。
  • 虚 … 何も考えず、心を静かに落ち着けること。虚静。説郛本および二家詩品本では「虗」に作る。異体字。
  • 神素 … 飾り気のない心。質朴な精神。
  • 佇 … しばらくの間、たたずむこと。李白「さつばん」に「ぎょくかいむなしく佇立ちょりつ宿しゅくちょうかえぶこときゅうなり」(玉階空佇立、宿鳥歸飛急)とある。ウィキソース「菩薩蠻 (李白)」参照。ここでは保ち続けること。
  • 畦封 … 本来はあぜの境。畦畛けいしん。ここでは世俗の古いしきたり。
  • 脱然 … 超脱すること。超越すること。
黃唐在獨、落落玄宗。
黄唐こうとうひとれば、落落らくらくたる玄宗げんそう
  • 黄唐 … 黄帝と陶唐氏堯帝。ウィキペディア【黄帝】【】参照。ここでは太古の時代を指す。
  • 黄唐在独 … 本来ならば語順が「独在黄唐」とするべきところ、陶淵明の「うん」に「黄唐こうとうおよし、なげきはひとわれり」(黃唐莫逮、慨獨在余)とあるのに倣っている。ウィキソース「時運」参照。
  • 落落 … 性格が偏り、俗世間と相容れないさま。
  • 玄宗 … 太古の宗師。「宗師」は、手本とされ、尊敬される人。ここでは高古の詩風を指す。
一 雄渾 二 冲淡
三 繊穠 四 沈著
五 高古 六 典雅
七 洗煉 八 勁健
九 綺麗 十 自然
十一 含蓄 十二 豪放
十三 精神 十四 縝密
十五 疎野 十六 清奇
十七 委曲 十八 実境
十九 悲概 二十 形容
二十一 超詣 二十二 飄逸
二十三 曠達 二十四 流動