二十四詩品 一 雄渾
- 雄渾 … 詩風が力強く円熟していること。
- 充・雄・空・風・中・窮(平声東韻)。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
大用外腓、眞體內充。
大用外に腓るは、真体内に充つればなり。
- 大用 … 大いなる働き。「用」は、外にあらわれた働きのこと。絢爛たる文章表現を指す。
- 外 … 外面。
- 腓 … 変わる。変化する。
- 真体 … そのものの本質。真の姿。真実の本体。「体」は、本質。
- 内 … 内面。
- 充 … 満ちる。充実する。
返虛入渾、積健爲雄。
虚に返れば渾に入り、健を積めば雄を為す。
- 虚 … 何も考えないで、心を静かに落ち着けている様子。虚静。説郛本では「虗」に作る。異体字。
- 返 … もとの状態に立ち返る。
- 渾 … 大きくて、どっしりして、深みのあること。渾厚。
- 健 … 文章が剛直で、力強い様子。
- 雄 … 荘厳で、雄雄しく立派なさま。
具備萬物、橫絕太空。
具に万物を備え、太空に横絶す。
- 具 … 尽く。
- 万物 … あらゆる事物の理。万理。
- 太空 … おおぞら。大空。
- 横絶 … 横切って向こう側に行く。
荒荒油雲、寥寥長風。
荒荒たる油雲、寥寥たる長風。
- 荒荒 … 果てしない様子。
- 油雲 … 盛んに湧き起こる雲。「油」は、油然。盛んに湧き起こる様子。『孟子』梁恵王篇上に「七八月の間、旱すれば則ち苗槁れん。天油然として雲を作し、沛然として雨を下さば、則ち苗浡然として之に興きん」(七八月之閒、旱則苗槁矣。天油然作雲、沛然下雨、則苗浡然興之矣)とある。ウィキソース「孟子/梁惠王上」参照。
- 寥寥 … 広大で空虚なさま。
- 長風 … 遠くから吹いてくる風。
超以象外、得其環中。
超ゆるに象外を以てし、其の環中を得よ。
- 超 … 超越する。
- 象外 … 現象以外。「象」は、現象。表現。
- 得其環中 … 物事の核心を把握せよ。「環中」は、中心。核心。『荘子』斉物論篇に「彼是其の偶を得る莫き、之を道枢と謂う。枢にして始めて其の環中を得て、以て無窮に応ず」(彼是莫得其偶、謂之道樞。樞始得其環中、以應無窮)とある。ウィキソース「莊子/齊物論」参照。
持之匪強、來之無窮。
之を持するに強うるに匪ずんば、之を来らしめて窮まること無し。
- 持之 … これに対処する。「之」は、雄渾たる風格を指す。
- 匪強 … 強いるのでなければ。「強」は、強いる。無理やりにさせる。
- 匪 … 「~ず」「あらず」と読み、「~でない」と訳す。「非」と同義。
- 来之 … そこに到達するなら。「之」は、雄渾たる風格を指す。
- 無窮 … 尽きることはない。
一 雄渾 | 二 冲淡 |
三 繊穠 | 四 沈著 |
五 高古 | 六 典雅 |
七 洗煉 | 八 勁健 |
九 綺麗 | 十 自然 |
十一 含蓄 | 十二 豪放 |
十三 精神 | 十四 縝密 |
十五 疎野 | 十六 清奇 |
十七 委曲 | 十八 実境 |
十九 悲概 | 二十 形容 |
二十一 超詣 | 二十二 飄逸 |
二十三 曠達 | 二十四 流動 |