二十四詩品 十 自然
- 自然 … 詩風が人為的でなく、ありのままの状態であること。
- 隣・春・新・貧・蘋・鈞(平声真韻)。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
俯拾即是、不取諸隣。
俯して拾わば即ち是にして、諸を隣に取らず。
- 俯拾 … 身体をかがめて拾えば。
- 是 … 自然な詩風。
- 不取諸隣 … 自然の境地を自分の周りに求めない。「諸」は、自然の境地。直前の「是」と同じ。「隣」は、自分の周辺。ここでは自然の境地は自分の足元にあり、周りに求める必要がないということ。
倶道適往、著手成春。
道と倶に適き往かば、手を著くところ春を成す。
- 倶道 … 道理とともに。
- 適往 … 求めていく。「適」も「往」も、行く。
- 著手 … 手の触れるところがすべてそのまま。
- 成春 … 春となる。
如逢花開、如瞻歳新。
花の開くに逢うが如く、歳の新たなるを瞻るが如し。
- 逢 … 思いがけなく巡り逢うこと。
- 歳新 … 歳月が改まること。新しい年を迎えること。
- 瞻 … まっすぐ見る。じっと眺める。『論語』子罕篇に「之を瞻れば前に在り、忽焉として後に在り」(瞻之在前、忽焉在後)とある。
眞與不奪、強得易貧。
真に与えらるるは奪われず、強いて得れば貧なり易し。
- 真 … ここでは自然に。
- 与 … 与えられたもの。『孟子』離婁篇下に「以て与う可く、以て与うる無かる可し。与うれば恵を傷つく」(可以與、可以無與。與傷惠)とある。ウィキソース「孟子/離婁下」参照。二家詩品本では「予」に作り、「予一本作與」との注がある。
- 不奪 … 他人に奪い取られることはない。
- 強 … 無理矢理に。
- 易貧 … 失いやすい。
幽人空山、過雨採蘋。
幽人は空山にあり、雨を過して蘋を採る。
薄言情悟、悠悠天鈞。
薄か言に情悟せよ、悠悠たるかな天鈞。
- 薄言 … 発語詞。「薄」は、いささか。しばらく。はじめて。「言」は、ここに。『詩経』周南・芣苢の詩に「芣苢を采り采る、薄か言に之を采る」(采采芣苢、薄言采之)とある。ウィキソース「詩經/芣苢」参照。
- 情悟 … 心からなるほどと悟ること。「悟」は、二家詩品本では「晤」に作る。
- 悠悠 … 変わりなくいつまでも続くこと。長久であること。永久であること。陳子昂の「登幽州台歌」に「天地の悠悠たるを念い、独り愴然として涕下る」(念天地之悠悠、獨愴然而涕下)とある。
- 天鈞 … 自然平等の原理。天均。『荘子』斉物論篇に「是を以て聖人之を和するに是非を以てし、天鈞に休む」(是以聖人和之以是非、而休乎天鈞)とある。ウィキソース「莊子/齊物論」参照。
一 雄渾 | 二 冲淡 |
三 繊穠 | 四 沈著 |
五 高古 | 六 典雅 |
七 洗煉 | 八 勁健 |
九 綺麗 | 十 自然 |
十一 含蓄 | 十二 豪放 |
十三 精神 | 十四 縝密 |
十五 疎野 | 十六 清奇 |
十七 委曲 | 十八 実境 |
十九 悲概 | 二十 形容 |
二十一 超詣 | 二十二 飄逸 |
二十三 曠達 | 二十四 流動 |