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二十四詩品 二十四 りゅうどう

  • 流動 … 詩風が固定せず、たえず流れ動いていること。
  • 珠・愚・樞・符・無・乎(平声虞韻)。
  • ウィキソース「二十四詩品」参照。
若納水輨、如轉丸珠。
水輨すいかんおさむるがごとく、丸珠がんしゅころがすがごとし。
  • 水輨 … 水車。
  • 納 … ここでは運行する。水車を回すこと。
  • 丸珠 … 丸い玉。
夫豈可道、假體如愚。
けんや、たいることなるがごとし。
  • 夫 … 「それ」と読み、「そもそも」「さて」「ところで」と訳す。文頭におかれる。発語の助辞。
  • 豈可道 … どうして言うことができようか、いやできない。「道」は、言う。
  • 豈 … 「あに~ん(や)」と読み、「どうして~しようか、いやしない」と訳す。反語の意を示す。
  • 仮体 … 物の心象を借りて表現する。「体」は、心象。イメージ。「仮」は、「借」と同じ。助けを借りること。『荀子』勧学篇に「くんせいことなるにあらざるなり、ものればなり」(君子生非異也、善假於物也)とある。ウィキソース「荀子/勸學篇」参照。
  • 愚 … 愚かなこと。
  • 如 … 二家詩品本では「遺」に作り、「一本遺作如」との注がある。
荒荒坤軸、悠悠天樞。
荒荒こうこうたる坤軸こんじく悠悠ゆうゆうたる天枢てんすう
  • 荒荒 … 通常は、荒れ果てているさま。薄暗いさま。暗澹たるさま。ここでは「茫茫」と同じ。広々として果てしない様子。
  • 坤軸 … 大地の中心を貫き、大地を支えていると想像された軸。地軸。「坤」は、易の八卦の一つ。地を表す。
  • 悠悠 … 果てしなくゆったりと広がっているさま。
  • 天枢 … 星の名。北斗七星の中の一つ。ここでは天体の枢軸。「枢」は、説郛本では「機」に作るが、全唐詩本、二家詩品本等に従い改めた。なお、二家詩品本には「樞作機」との注がある。
載要其端、載聞其符。
すなわたんもとめ、すなわけ。
  • 載 … 「載~載…」の形で「すなわち~すなわち…」と読み、「~しながら…する」と訳す。二つの動作を同時に行う意を示す。
  • 其端 … 「其」は、前句の「坤軸」「天枢」、すなわち天地万物を指す。「端」は、物事の起こる始め。発端ほったん。ここでは本源、根本法則を指す。『荀子』君道篇に「ほうなるものは、たんなり」(法者、治之端也)とある。ウィキソース「荀子/君道篇」参照。
  • 要 … 求める。
  • 符 … 符命。天の神が、誰かを天子にしようとするときに下すしるし。ここでは天地万物の道理を指す。『漢書』とうちゅうじょ伝に「臣聞く、天の大いに奉じ之をして王たらしむる所の者は、必ず人力の能く致す所に非ずして自ら至る者有り。此れ受命の符なり」(臣聞、天之所大奉使之王者、必有非人力所能致而自至者。此受命之符也)とある。ウィキソース「漢書/卷056」参照。
  • 聞 … 聞いて物事をはっきりと理解すること。二家詩品本では「同」に作り、「同作聞」との注がある。
超超神明、返返冥無。
超超ちょうちょうたる神明しんめい返返へんへんたるめい
  • 超超 … 非常に優れているさま。
  • 神明 … 天地自然の霊妙にして不可思議な働き。
  • 返返 … 循環して何度も繰り返すさま。
  • 冥無 … 奥深くてはっきり見えず、求めても得られない不可思議な道理。
来往千載、是之謂乎。
来往らいおう千載せんざいとは、これうか。
  • 来往 … 行ったり来たりすること。ここでは流動し続けること。
  • 千載 … 千年。転じて、長い年月。「千歳せんざい」も同じ。「載」は、二家詩品本では「歳」に作る。
  • 是之謂乎 … このようなことを言うのであろうか。
  • 是 … 「来往千載」を指す。
  • 之 … 「~をれ…」と読み、「~を…する」と訳す。倒置。ここでは本来「謂是乎」となるべきところ、「是」を強調するために倒置し、それを知らせるための「之」が倒置された語「是」の下に付く。
一 雄渾 二 冲淡
三 繊穠 四 沈著
五 高古 六 典雅
七 洗煉 八 勁健
九 綺麗 十 自然
十一 含蓄 十二 豪放
十三 精神 十四 縝密
十五 疎野 十六 清奇
十七 委曲 十八 実境
十九 悲概 二十 形容
二十一 超詣 二十二 飄逸
二十三 曠達 二十四 流動