二十四詩品 十四 縝密
- 縝密 … 詩風が細やかで、緻密であること。
- 知・奇(平声支韻)、晞(平声微韻)、遲・癡・時(平声支韻)通用。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
是有真迹、如不可知。
是れ真迹有るも、知る可からざるが如し。
- 是 … 縝密なる風格を指す。
- 真迹 … 明白な形跡。「迹」は「跡」と同義。
- 不可知 … 人に察知されない。
意象欲出、造化已奇。
意象出でんと欲して、造化已に奇なり。
- 意象 … 作品の中に描かれた意向や心象。
- 出 … 現出する。全唐詩本では「生」に作る。二家詩品本でも「生」に作り、「生一本作出」との注がある。
- 造化 … 天地。自然。杜甫「望岳」に「造化神秀を鍾め、陰陽昏暁を割く」(造化鍾神秀、陰陽割昏曉)とある。ウィキソース「望嶽 (岱宗夫如何)」参照。
- 奇 … 不思議なさま。
水流花開、清露未晞。
水流れ花開き、清露未だ晞かず。
- 開 … 説郛本では「蜀」に作るが、全唐詩本等に従い改めた。二家詩品本には「開一本作間」との注がある。
- 清露 … 清らかな露。
- 晞 … 乾く。『詩経』秦風・蒹葭の詩に「蒹葭萋萋たり、白露未だ晞かず」(蒹葭萋萋、白露未晞)とある。ウィキソース「詩經/蒹葭」参照。
要路愈遠、幽行爲遲。
要路愈〻遠く、幽行遅きを為す。
- 要路 … 主要な道路。ここでは作品の主要な構想。
- 愈 … 「いよいよ」と読み、「さらに」「ますます」と訳す。事態・程度が先をこえて発展する意を示す。
- 遠 … はるかに遠いこと。悠遠であること。
- 幽行為遅 … 詩を作る速さが緩慢で奥深いさま。
語不欲犯、思不欲癡。
語は犯さんと欲せず、思いは癡ならんと欲せず。
猶春於綠、明月雪時。
猶お春の緑に於けるがごとく、明月の雪の時におけるがごとし。
- 猶 … 「なお~のごとし」と読み、「ちょうど~のようだ」と訳す。再読文字。ここでは下の句にも係る。
- 春於緑 … 春の日差しを浴びた緑の木々。「於」は、二家詩品本では「于」に作り、「于一本作於」との注がある。
- 明月雪時 … 明月に照らされた雪景色。
一 雄渾 | 二 冲淡 |
三 繊穠 | 四 沈著 |
五 高古 | 六 典雅 |
七 洗煉 | 八 勁健 |
九 綺麗 | 十 自然 |
十一 含蓄 | 十二 豪放 |
十三 精神 | 十四 縝密 |
十五 疎野 | 十六 清奇 |
十七 委曲 | 十八 実境 |
十九 悲概 | 二十 形容 |
二十一 超詣 | 二十二 飄逸 |
二十三 曠達 | 二十四 流動 |