二十四詩品 九 綺麗
- 綺麗 … 詩風が華やかで美しいこと。
- 金・深・林・陰・琴・襟(平声侵韻)。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
神存富貴、始輕黄金。
神富貴を存たば、始めて黄金を軽んず。
- 神 … 精神。
- 富貴 … ここでは内面が豊かなこと。
- 存 … 「たもつ」と読み、「保つ」「じっと留める」と訳す。
- 始 … そうして始めて。
- 軽 … 軽視する。
濃盡必枯、淡者屢深。
濃は尽きて必ず枯れ、淡なる者は屢〻深し。
- 濃尽 … 濃厚なものが尽き果てる。
- 淡 … 淡泊。二家詩品本では「淺」に作り、「淺一本作淡非」との注がある。
- 屢 … しばしば。
- 深 … 奥深い。
霧餘水畔、紅杏在林。
霧水畔に余り、紅杏林に在り。
- 水畔 … 水辺。
- 余 … 消え残っている。
- 霧餘水畔 … 二家詩品本では「露餘山青」に作る。
- 紅杏 … 赤い杏の実。
月明華屋、畫橋碧陰。
月明の華屋、画橋の碧陰。
- 月明 … 月明かり。
- 華屋 … 華やかで立派な楼閣。
- 画橋 … 美しく彩色を施した橋。
- 碧陰 … 緑の木陰。
金尊酒滿、伴客彈琴。
金尊に酒満ち、客を伴って琴を弾ず。
- 金尊 … 酒樽の美称。金樽。「尊」は、二家詩品本では「罇」に作る。
- 伴客 … 友人といっしょに。
取之自足、良殫美襟。
之を取りて自足し、良に美襟を殫せ。
- 取之 … 作品の豊富な素材を取り入れる。「之」は、今まで述べた自然の風景。すなわち作品の素材を指す。「取」は、取り入れる。獲得する。
- 自足 … その状態に自分で満足すること。
- 良 … 間違いなく。確かに。本当に。
- 美襟 … 美しい心の中。「襟」は、胸襟。胸中。
- 殫 … 力を尽くすこと。陶淵明の「諸人と共に周家の墓の柏の下に游ぶ」に「清歌に新声を散じ、緑酒に芳顔を開く。未だ知らず明日の事、余が襟は良に已に殫きたり」(清歌散新聲、綠酒開芳顏。未知明日事、余襟良已殫)とある。ウィキソース「諸人共游周家墓柏下」参照。
一 雄渾 | 二 冲淡 |
三 繊穠 | 四 沈著 |
五 高古 | 六 典雅 |
七 洗煉 | 八 勁健 |
九 綺麗 | 十 自然 |
十一 含蓄 | 十二 豪放 |
十三 精神 | 十四 縝密 |
十五 疎野 | 十六 清奇 |
十七 委曲 | 十八 実境 |
十九 悲概 | 二十 形容 |
二十一 超詣 | 二十二 飄逸 |
二十三 曠達 | 二十四 流動 |