二十四詩品 二十 形容
- 形容 … 詩風が物の形や状態をいろいろな表現や喩えなどで巧みに言い表していること。
- 眞・春・神・峋・塵・人(平声真韻)。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
絕佇靈素、少迴清眞。
絶えず霊素を佇うれば、少くして清真に迴る。
- 絶 … 絶え間なく。いつも。
- 霊素 … 心の純朴さ。「霊」は、心。「素」は、純朴。
- 佇 … 保存する。保ち続ける。
- 少 … しばらく。少しの間経って。
- 清真 … 清新で真実なさま。
- 迴 … 元に戻る。「回」と同じ。
如覓水影、如寫陽春。
水影を覓むるが如く、陽春を写すが如し。
- 水影 … 水面に映った物の姿。
- 覓 … 求める。探し求める。
- 陽春 … 暖かな春の季節。
- 写 … 描く。
風雲變態、花草精神。
風雲は態を変え、花草に精神あり。
- 風雲 … 風と雲。
- 変態 … 形態を変えること。「態」は、二家詩品本では「熊」に作る。
- 花草 … 花の咲く草。草花。
- 精神 … ここでは草花が生き生きとして勢いがある様子。盧梅坡「雪梅二首 其二」に「梅有り雪無ければ精神ならず、雪有り詩無ければ人を俗了す」(有梅無雪不精神、有雪無詩俗了人)とある。「俗了」は、俗っぽくしてしまうこと。ウィキソース「雪梅 (盧梅坡)」参照。
海之波瀾、山之嶙峋。
海の波瀾、山の嶙峋。
- 波瀾 … 大海が波立つさま。「波」は小波、「瀾」は大波の意。
- 嶙峋 … 山が取り巻いて巡るさま。また、山が非常に深いさま。
倶似大道、妙契同塵。
倶に大道を似ねれば、妙に同塵と契らん。
離形得似、庶幾斯人。
形を離れて似ね得れば、斯の人に庶幾し。
- 離形 … 外形を真似ることから離れる。「形」は、外形。外観。
- 得似 … 内面を真似ることができれば。
- 斯人 … 形容の境地を表現できる人。
- 庶幾 … きっと~だろう。望ましい状態に近いこと。『孟子』梁恵王篇下に「王の楽を好むこと甚だしければ、則ち斉国其れ庶幾からんか」(王之好樂甚、則齊國其庶幾乎)とある。ウィキソース「孟子/梁惠王下」参照。なお、「庶幾」にはその他、「庶幾わくは」と読み、「ぜひ望むことは」「ぜひ~したい」と訳す用法もある。
一 雄渾 | 二 冲淡 |
三 繊穠 | 四 沈著 |
五 高古 | 六 典雅 |
七 洗煉 | 八 勁健 |
九 綺麗 | 十 自然 |
十一 含蓄 | 十二 豪放 |
十三 精神 | 十四 縝密 |
十五 疎野 | 十六 清奇 |
十七 委曲 | 十八 実境 |
十九 悲概 | 二十 形容 |
二十一 超詣 | 二十二 飄逸 |
二十三 曠達 | 二十四 流動 |