二十四詩品 十二 豪放
- 豪放 … 詩風が大らかで、意気が盛んなこと。
- 荒・狂・蒼・旁・凰・桑(平声陽韻)。
- ウィキソース「二十四詩品」参照。
觀花匪禁、呑吐大荒。
花を観て禁ぜらるるに匪ず、大荒を呑吐す。
由道返氣、處得以狂。
道に由りて気に返れば、処し得るに狂を以てす。
- 由道 … 自然の道理に従って。
- 返気 … 豪気を育む。
- 処得 … 処置することができる。ここでは創作することができる。
- 狂 … 普通の型を超えて自由自在なさま。
天風浪浪、海山蒼蒼。
天風は浪浪と、海山は蒼蒼たり。
眞力彌滿、萬象在旁。
真力弥満すれば、万象旁に在り。
- 真力 … 真の力。ここでは精神の活力を指す。
- 弥満 … 満ち溢れる。広くはびこる。弥漫。
- 万象 … 森羅万象。宇宙間に存在するすべての物や一切の現象。
- 在旁 …すぐ近くの辺りにあること。
前招三辰、後引鳳凰。
前に三辰を招き、後に鳳凰を引く。
- 前 … まずは。
- 三辰 … 日・月・星のこと。『左伝』桓公二年に「三辰旂旗は、其の明を昭かにするなり」(三辰旂旗、昭其明也)とある。ウィキソース「春秋左氏傳/桓公」参照。
- 招 … 手招きする。誘って、来させる。
- 後 … 次には。
- 鳳凰 … 立派な天子が世に出たときに現れるといわれる、想像上の鳥。雄を「鳳」、雌を「凰」という。「凰」は、説郛本では判読不能のため、二家詩品本に従い補った。全唐詩本では「皇」に作る。
- 引 … 引いて近くに寄せる。
曉策六鼇、濯足扶桑。
暁に六鼇に策うち、足を扶桑に濯う。
- 暁 … 明け方。夜明け。
- 六鼇 … 六匹の大海亀。「鼇」は、伝説上の海にいる大亀。李白の「猛虎行」に「巨鼇未だ斬らず海水動く、魚龍奔走す安んぞ寧きを得ん」(巨鼇未斬海水動、魚龍奔走安得寧)とある。ウィキソース「猛虎行 (李白)」参照。説郛本および二家詩品本では「鰲」に作るが、全唐詩本等に従い改めた。
- 策 … むち打つ。
- 濯足 … 足を洗う。世俗を超脱することに喩える。
- 扶桑 … 東方の島にあり、日が昇る所にあると伝えられた神木の名。『山海経』海外東経に「湯谷の上に扶桑有り、十日の浴する所なり。黒歯の北に在り。水中に居り、大木有り。九日下枝に居り、一日上枝に居る」(湯谷上有扶桑、十日所浴。在黑齒北。居水中、有大木。九日居下枝、一日居上枝)とある。ウィキソース「山海經/海外東經」参照。また、『海内十洲記』に「扶桑は碧海の中に在り、……地は林木多く、葉は皆な桑の如し」(扶桑在碧海之中、……地多林木、葉皆如桑)とある。ウィキソース「海內十洲記」参照。
一 雄渾 | 二 冲淡 |
三 繊穠 | 四 沈著 |
五 高古 | 六 典雅 |
七 洗煉 | 八 勁健 |
九 綺麗 | 十 自然 |
十一 含蓄 | 十二 豪放 |
十三 精神 | 十四 縝密 |
十五 疎野 | 十六 清奇 |
十七 委曲 | 十八 実境 |
十九 悲概 | 二十 形容 |
二十一 超詣 | 二十二 飄逸 |
二十三 曠達 | 二十四 流動 |