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月下独酌四首其一(李白)

月下獨酌四首其一
月(げっ)下(か)独(どく)酌(しゃく)四(し)首(しゅ) 其(そ)の一(いち)
李(り)白(はく)
  • 五言古詩。親・人・身・春(上平声真韻)/亂・散・漢(去声翰韻)、換韻。
  • ウィキソース「月下獨酌 (花間一壺酒)」参照。
  • 詩題 … 『文苑英華』では「對酒」に作り、「一作月下獨酌」と注する。『宋本』には、題下に「長安」と注する。
  • 李白 … 701~762。盛唐の詩人。字(あざな)は太白。青蓮居士と号した。生地や家系には諸説あるが、西域の条(じょう)支(し)(アフガニスタンのガズニ周辺)、または砕葉(すいよう)(キルギス共和国のトクマク付近)で生まれ、五歳の時に家族とともに蜀の綿州隆昌県青蓮郷(四川省江油市青蓮鎮)に移住したと考えられる。科挙を受験せず、各地を遊歴。天宝元年(742)、玄宗に召されて翰林(かんりん)供奉(ぐぶ)(天子側近の文学侍従)となった。しかし、玄宗の側近で宦官の高力士らに憎まれて都を追われ、再び放浪の生活を送った。杜甫と並び称される大詩人で「詩仙」と仰がれた。『李太白文集』三十巻がある。ウィキペディア【李白】参照。
花間一壺酒
花(か)間(かん) 一(いっ)壺(こ)の酒(さけ)
  • 花間 … 花の咲くもとで。花の咲いている中で。北宋の蘇軾「月(げつ)夜(や)に客(かく)と酒を杏(きょう)花(か)の下(もと)に飲む」詩(『東坡全集』巻十)に「花間に置(ち)酒(しゅ)すれば清香発す、争(あらそ)うて長条を挽(ひ)けば香雪を落とす」(花間置酒清香發、爭挽長條落香雪)とある。置酒は、酒宴を開くこと。長条は、長い枝。香雪は、香り高い雪片。ここでは、白い杏(あんず)の花びらにたとえる。ウィキソース「月夜與客飲酒杏花下」参照
  • 間 … 『全唐詩』には「一作下、一作前」と注する。『文苑英華』では「前」に作り、「一作下」と注する。
  • 一壺酒 … 酒壺(さかつぼ)いっぱいに満ちた酒。
獨酌無相親
独(ひと)り酌(く)みて 相(あい)親(した)しむ無(な)し
  • 独酌 … 自分で自分の杯に酒をついで飲むこと。手(て)酌(じゃく)すること。
  • 無相親 … 酌み交わす親しい友人もいない。
  • 相 … ここでは「互いに」という意味ではなく、動作に対象があることを示す接頭語。「(対象に)~する」「(対象を)~する」と訳す。
舉杯邀明月
杯(さかずき)を挙(あ)げて 明月(めいげつ)を邀(むか)え
  • 挙杯 … 杯を高々とあげて。
  • 明月 … 明るく輝く月。『楚辞』九弁に「明月を卬(あお)いで太息(たいそく)し、列星に歩(ほ)して明(めい)に極(いた)る」(卬明月而太息兮、歩列星而極明)とある。太息は、ため息。列星は、空に列(つら)なる星。明に極(いた)るとは、明け方に至る。ウィキソース「九辯」参照。また、三国魏の文帝(曹丕)の楽府「燕歌行二首」(『楽府詩集』巻三十二、『文選』巻二十七、『玉台新詠』巻九)の第一首に「明月皎皎(きょうきょう)として我が床(しょう)を照らし、星漢(せいかん)西に流れて夜未だ央(つ)きず」(明月皎皎照我床、星漢西流夜未央)とある。皎皎は、明るいさま。星漢は、天の川。未だ央(つ)きずとは、尽きない。終わらない。ウィキソース「燕歌行 (曹丕)」参照。また、三国魏の曹植「公讌(こうえん)の詩」(『文選』巻二十)に「明月に清景澄み、列(れっ)宿(しゅく)正に参(しん)差(し)たり」(明月澄清景、列宿正參差)とある。列宿は、大空に連なる多くの星。参差は、ばらばらに散らばるさま。ウィキソース「公讌詩 (曹子建)」参照。また、南朝梁の湘東王繹(えき)(蕭(しょう)繹(えき)、後の元帝)「寒宵三韻」詩(『玉台新詠』巻七)に「池水明月を浮かべ、寒風擣(とう)衣(い)を送る」(池水浮明月、寒風送擣衣)とある。池水は、池の水面。擣衣は、洗った着物を砧(きぬた)に載せて棒で叩くこと。ウィキソース「寒宵三韻」参照。
  • 邀 … 迎える。(客として)招き寄せる。
對影成三人
影(かげ)に対(たい)して三人(さんにん)と成(な)る
  • 影 … 地上に映った自身の影。
  • 対 … 向き合う。仲間に入れる。
  • 成三人 … (飲み仲間が)自分と自分の影と月で三人となった。
月既不解飲
月(つき)は既(すで)に飲(の)むを解(よ)くせず
  • 既 … もともと。
  • 不解 … 「解(かい)せず」と読んでもよい。~できない。不能に同じ。
影徒隨我身
影(かげ)は徒(いたず)らに我(わ)が身(み)に随(したが)う
  • 影 … 自分の影。
  • 徒 … ただむなしく~するだけ。
  • 随 … 付き従う。
暫伴月將影
暫(しばら)く月(つき)と影(かげ)とを伴(ともな)いて
  • 暫 … しばらくの間。
  • 将 … 「~と」と読み、「~と」と訳す。並列の意を示す助字。「与」と同じであるが、「与」よりも口語的で軽い響きを持つ。
行樂須及春
行楽(こうらく) 須(すべか)らく春(はる)に及(およ)ぶべし
  • 行楽 … 楽しむこと。楽しみをなすこと。
  • 須 … 「すべからく~べし」と読み、「ぜひ~する必要がある」「ぜひとも~するべきだ」と訳す。再読文字。
  • 及春 … 春のうちに。春の過ぎぬ間に。及は、捕まえて逃さないの意。「古詩十九首」第十五首(『文選』巻二十九)に「楽しみを為すは当に時に及ぶべし」(爲樂當及時)とある。ウィキソース「生年不滿百」参照。
我歌月徘徊
我(われ)歌(うた)えば 月(つき)徘徊(はいかい)し
  • 徘徊 … さまよう。行きつ戻りつする。『荘子』盗跖篇に「而(なんじ)の意を独成(どくせい)して、道と与(とも)に徘徊せよ」(獨成而意、與道徘徊)とある。独成は、独り自ら成すこと。徘徊は、ここでは転変推移していくこと。ウィキソース「莊子/盜跖」参照。また、三国魏の曹植の楽府「七哀の詩」(『文選』巻二十三、『玉台新詠』巻二では「雑詩五首其一」、『楽府詩集』巻四十一では「怨詩行二首其二」と題す)に「明月高楼(こうろう)を照らし、流(りゅう)光(こう)正(まさ)に徘徊す」(明月照高樓、流光正徘徊)とある。ウィキソース「七哀詩 (曹子建)」参照。また、三国魏の応瑒(おうとう)「五官中郎将の建章台の集(つど)いに侍するの詩」(『文選』巻二十)に「問う子(し)何(いず)れの郷にか遊び、翼を戢(おさ)めて正に徘徊すと」(問子遊何郷、戢翼正徘徊)とある。ウィキソース「侍五官中郎將建章臺集詩」参照。また、南朝梁の元帝の楽府「傷別離」(『玉台新詠』巻七、『楽府詩集』巻二十三では「関山月」に作る)に「月(げっ)中(ちゅう)桂樹(けいじゅ)を含み、流(りゅう)影(えい)自ずから徘徊す」(月中含桂樹、流影自徘徊)とある。ウィキソース「傷別離」「樂府詩集/023卷」参照。『全唐詩』では「裴回」に作る。
我舞影零亂
我(われ)舞(ま)えば 影(かげ)零乱(れいらん)す
  • 舞 … 踊る。
  • 零乱 … ゆらゆらと乱れ動く。『宋本』『劉本』『文苑英華』では「凌乱」に作る。意味は「零乱」とほぼ同じ。
醒時同交歡
醒(さ)むる時(とき) 同(とも)に交歓(こうかん)し
  • 醒時 … 「醒(せい)時(じ)」と読んでもよい。酔っていない時。
  • 同 … ともに。いっしょに。共に同じ。
  • 交歓 … 互いにうち解けて楽しむ。
醉後各分散
酔(よ)いて後(のち) 各〻(おのおの)分散(ぶんさん)す
  • 酔後 … 「酔(すい)後(ご)」と読んでもよい。酔いつぶれてしまうと。
  • 各分散 … それぞれがばらばらになる。三者が別れ別れになる。
永結無情遊
永(なが)く無(む)情(じょう)の遊(ゆう)を結(むす)び
  • 永 … 永遠に。いつまでも。
  • 無情遊 … 人間の俗情を捨てた交わり。世俗の人情を超えた交わり。無情は、感情を持たないもの。月と影を指す。遊は、交遊。交歓。
  • 結 … 結び続けようと思う。
相期邈雲漢
相(あい)期(き)す 邈(はる)かなる雲漢(うんかん)に
  • 相期 … 再会を約束する。相は、動作に相手があることを示す。
  • 邈 … 遥かに遠い様子。
  • 雲漢 … 天の川。
  • 邈雲漢 … 『全唐詩』には「一作碧巖畔」と注する。
テキスト
  • 『唐詩三百首注疏』巻一・五言古詩(廣文書局、1980年)
  • 『全唐詩』巻一百八十二(排印本、中華書局、1960年)
  • 『李太白文集』巻二十一(静嘉堂文庫蔵宋刊本影印、平岡武夫編『李白の作品』所収、略称:宋本)
  • 『李太白文集』巻二十一(繆(ぼく)曰(えつ)芑(き)重刊、雙泉草堂本、略称:繆本)
  • 『分類補註李太白詩』巻二十三(蕭(しょう)士(し)贇(いん)補注、内閣文庫蔵、略称:蕭本)
  • 『分類補註李太白詩』巻二十三(蕭士贇補注、郭雲鵬校刻、『四部叢刊 初篇集部』所収、略称:郭本)
  • 『分類補註李太白詩』巻二十三(蕭士贇補注、許自昌校刻、『和刻本漢詩集成 唐詩2』所収、略称:許本)
  • 『李翰林集』巻十八(景宋咸淳本、劉世珩刊、江蘇広陵古籍刻印社、略称:劉本)
  • 『李太白全集』巻二十三(王琦編注、『四部備要 集部』所収、略称:王本)
  • 『文苑英華』巻一百九十五(影印本、中華書局、1966年)
  • 『唐詩品彙』巻六([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻二([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『唐宋詩醇』巻八(乾隆二十五年重刊、紫陽書院、内閣文庫蔵)
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