尉繚子 原官第十
官者、事之所主、爲治之本也。制者、職分四民、治之分也。貴爵冨禄、必稱尊卑之體也。好善罰惡、正比法、會計民之具也。均井地、節賦斂、取與之度也。程工人、備器用、匠工之功也。分地塞要、殄怪禁淫之事也。
官は、事の主どる所、治を為すの本なり。制は、職四民を分つ、治の分なり。爵を貴くし禄を富ますは、必ず尊卑の体に称うなり。善を好み悪を罰し、法を正比するは、民を会計するの具なり。井地を均しくし、賦斂を節するは、取与の度なり。工人を程り、器用を備うるは、匠工の功なり。地を分ち要を塞ぐは、怪を殄ち淫を禁ずるの事なり。
- ウィキソース「尉繚子 (四庫全書本)/卷2」参照。
守法稽断、臣下之節也。明法稽驗、主上之操也。明主守等輕重、臣主之權也。
法を守り断を稽るは、臣下の節なり。法を明らかにし、験を稽るは、主上の操なり。主守を明らかにし、軽重を等しくするは、臣主の権なり。
明賞賚嚴誅責、止奸之術也。審開塞守一道、爲政之要也。下達上通、至聰之聽也。知國有無之數、用其仂也。知彼弱者、強之體也。知彼動者、靜之决也。
賞賚を明らかにし、誅責を厳しくするは、奸を止むるの術なり。開塞を審らかにし、一道を守るは、政を為すの要なり。下に達し上に通ずるは、至聡の聴なり。国の有無の数を知るは、其の仂を用うるなり。彼の弱きを知るは、強の体なり。彼の動きを知るは、静の決なり。
- 止奸 … 底本では「止姦」に作るが、『直解』に従い改めた。
官分文武、惟王之二術也。爼豆同制、天子之會也。遊説間諜無自入、正議之術也。諸侯有謹天子之禮、君臣繼丗、承王之命也。更號易常、違王明德、故禮得以伐也。官無事治、上無慶賞、民無獄訟、國無商賈。何王之至。明舉上達、在王垂聽也。
官、文武を分つは、惟れ王の二術なり。俎豆、制を同じうするは、天子の会なり。遊説間諜自ら入ること無きは、議を正すの術なり。諸侯、天子に謹むの礼有り、君臣、世を継ぐは、王の命を承くるなり。号を更え常を易えるは、王の明徳に違う、故に礼もて以て伐つことを得るなり。官に事の治むる無く、上に慶賞無く、民に獄訟無く、国に商賈無し。何ぞ王の至れるや。明挙上達は、王の聴を垂るるに在り。
- 間諜 … 底本では「開諜」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 更號 … 底本では「更造」に作るが、『直解』に従い改めた。
天官第一 | 兵談第二 |
制談第三 | 戦威第四 |
攻権第五 | 守権第六 |
十二陵第七 | 武議第八 |
将理第九 | 原官第十 |
治本第十一 | 戦権第十二 |
重刑令第十三 | 伍制令第十四 |
分塞令第十五 | 束伍令第十六 |
経卒令第十七 | 勒卒令第十八 |
将令第十九 | 踵軍令第二十 |
兵教上第二十一 | 兵教下第二十二 |
兵令上第二十三 | 兵令下第二十四 |