尉繚子 天官第一
梁惠王問尉繚子曰、黄帝刑德、可以百勝、有之乎。
梁の恵王、尉繚子に問うて曰く、黄帝に刑徳あり、以て百勝す可しと、之れ有りや。
- ウィキソース「尉繚子 (四庫全書本)/卷1」参照。
尉繚子對曰、刑以伐之、德以守之。非所謂天官時日、陰陽向背也。黄帝者人事而已矣。
尉繚子、対えて曰く、刑は以て之を伐ち、徳は以て之を守る。所謂天官の時日、陰陽の向背に非ず。黄帝は人事のみ。
何者。今有城、東西攻不能取、南北攻不能取。四方豈無順時乗之者耶。
何となれば、今、城有らんに、東西より攻むれども取ること能わず。南北より攻むれども取ること能わず。四方豈に時に順いて之に乗ずる者無からんや。
然不能取者、城高池深、兵器備具、財穀多積、豪士一謀者也。若城下、池淺守弱、則取之矣。
然れども取ること能わざるは、城高く池深く、兵器備具し、財穀多く積み、豪士、謀を一にすればなり。若し城下く、池浅く、守り弱ければ、則ち之を取る。
由是觀之、天官時日不若人事也。
是に由りて之を観れば、天官の時日は人事に若かざるなり。
- 由 … 『直解』では「繇」に作る。
按天官曰、背水陳爲絶地、向阪陳爲廢軍。
天官を按ずるに曰く、水を背にして陣するを絶地と為し、阪に向かって陣するを廃軍と為す、と。
- 按 … 考えてみると。思うに。底本では「案」に作るが、『直解』に従い改めた。
- 地 … 底本では「紀」に作るが、『直解』に従い改めた。
武王伐紂、背濟水、向山阪而陳、以二萬二千五百人、撃紂之億萬而滅商。豈紂不得天官之陳哉。
武王、紂を伐つに、済水を背にし、山阪に向かいて陣し、二万二千五百人を以て、紂の億万を撃ちて商を滅ぼせり。豈に紂、天官の陣を得ざらんや。
楚將公子心與齊人戰。時有彗星出。柄在齊。柄所在勝。不可撃。公子心曰、彗星何知。以彗闘者、固倒而勝焉。明日與齊戰、大破之。
楚の将、公子心、斉人と戦う。時に彗星有りて出づ。柄、斉に在り。柄の在る所は勝つ。撃つ可からず。公子心曰く、彗星何をか知らん。彗を以て闘う者は、固より倒にして勝つ、と。明日、斉と戦いて、大いに之を破る。
- 闘 … 底本では「闘」の「」の部分を「」に作る。
黄帝曰、先神先鬼、先稽我智。謂之天官、人事而已。
黄帝曰く、神に先だち鬼に先だちて、先ず我が智を稽えよ、と。之を天官と謂うも人事のみ。
- 天官 … 底本では「天時」に作るが、『直解』に従い改めた。
天官第一 | 兵談第二 |
制談第三 | 戦威第四 |
攻権第五 | 守権第六 |
十二陵第七 | 武議第八 |
将理第九 | 原官第十 |
治本第十一 | 戦権第十二 |
重刑令第十三 | 伍制令第十四 |
分塞令第十五 | 束伍令第十六 |
経卒令第十七 | 勒卒令第十八 |
将令第十九 | 踵軍令第二十 |
兵教上第二十一 | 兵教下第二十二 |
兵令上第二十三 | 兵令下第二十四 |