鼎の軽重を問う
鼎の軽重を問う
- 出典:『春秋左氏伝』宣公三年(ウィキソース「春秋左氏傳/宣公」参照)
- 解釈:権威ある人の実力を疑う。また、統治者を軽んじ、その地位を奪おうとする。
- 春秋左氏伝 … 歴史書『春秋』の注釈書。三十巻。左丘明の著と伝えられる。十三経の一つ。ウィキペディア【春秋左氏伝】参照。
楚子伐陸渾之戎、遂至于雒、觀兵于周疆。定王使王孫滿勞楚子。楚子問鼎之大小輕重焉。
楚子、陸渾の戎を伐ち、遂に雒に至り、兵を周の疆に観す。定王、王孫満をして楚子を労らわしむ。楚子、鼎の大小軽重を問う。
- 楚子 … 楚の荘王。
- 陸渾 … 地名。河南省陸渾県。
- 戎 … 異民族の蔑称。
- 雒 … 洛水という川の名。
- 疆 … 国境。
- 観す … 威力を示す。
- 定王 … 周の天子。
- 王孫満 … 周の大夫。
對曰、在德不在鼎。昔、夏之方有德也、遠方圖物、貢金九牧、鑄鼎象物、百物而為之備、使民知神姦。故民入川澤山林、不逢不若。螭魅罔兩、莫能逢之。用能協于上下、以承天休。
対えて曰く、徳に在りて鼎に在らず。昔、夏の方に徳有るや、遠方には物を図き、金を九牧に貢せしめ、鼎を鋳て物を象り、百物にして之が備えを為し、民をして神姦を知らしむ。故に民は川沢山林に入りて、不若に逢わず。螭魅罔両、能く之に逢うこと莫し。用て能く上下を協え、以て天休を承く。
- 九牧 … 九州の長官。
- 神姦 … 怪物。
- 不若 … 邪悪な物。
- 螭魅罔両 … いろいろな怪物。魑魅魍魎。
- 天休 … 天からの恩恵。
桀有昏德、鼎遷于商。載祀六百。商紂暴虐、鼎遷于周。德之休明、雖小重也。其姦回昏亂、雖大輕也。
桀に昏徳有りて、鼎は商に遷る。載祀六百。商紂暴虐にして、鼎は周に遷る。徳の休明ならば、小なりと雖も重きなり。其の姦回昏乱ならば、大なりと雖も軽きなり。
- 昏徳 … 不徳。
- 休明 … りっぱでうるわしい。
- 姦回 … よこしま。
天祚明德、有所底止。成王定鼎于郟鄏、卜世三十、卜年七百。天所命也。今周德雖衰、天命未改。鼎之輕重、未可問也。
天の明徳に祚するや、底止する所有り。成王、鼎を郟鄏に定め、世を卜すること三十、年を卜するに七百。天の命ずる所なり。今、周の徳衰うと雖も、天命未だ改まらず。鼎の軽重、未だ問う可からざるなり、と。
- 郟鄏 … 周の旧都。
- 三十 … 三十世。
- 七百 … 七百年。
こちらもオススメ!
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | な行 | は行 |
ま行 | や行 | ら行・わ |
論語の名言名句 |