病入膏肓
病膏肓に入る
- 出典:『春秋左氏伝』成公十年(ウィキソース「春秋左氏傳/成公」参照)
- 解釈:病気が重くなって、治る見込みがなくなること。また、物事に熱中しすぎて、そこから抜けられなくなること。「膏」は、心臓の下部。「肓」は、横隔膜の上の隠れた部分。どちらも身体の最も奥深い部分で、治療が及ばない所。なお、「肓」を「盲」と書くのは誤り。
- 春秋左氏伝 … 歴史書『春秋』の注釈書。三十巻。左丘明の著と伝えられる。十三経の一つ。ウィキペディア【春秋左氏伝】参照。
公疾病。
公疾病なり。
求醫于秦。
医を秦に求む。
- 医 … 医者。ここでは名医。
- 于 … 置き字。場所を表す。
- 秦 … 今の陝西省の地をあった国。戦国七雄(秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓)の一つ。ウィキペディア【秦】参照。
- 求 … (名医を派遣してくれるよう)要請した。
秦伯使醫緩爲之。
秦伯医の緩をして之を為めしむ。
- 秦伯 … 秦の国の君主。ここでは桓公(在位前603~前577)を指す。ウィキペディア【桓公 (秦)】参照。
- 使 … 「使AB」の形で「AをしてB(せ)しむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。使役形。
- 医緩 … 名医の緩。
- 之 … 景公を指す。
- 為 … 治療する。
未至、公夢、疾爲二竪子曰、彼良醫也。
未だ至らざるに、公の夢に、疾二竪子と為りて曰く、彼は良医なり。
- 未 … 「いまだ~(せ)ず」と読み、「まだ~しない」と訳す。再読文字。
- 至 … 到着する。
- 公夢 … 景公が見た夢に。
- 竪子 … 子ども。
- 彼 … 緩を指す。
- 良医 … 名医。
懼傷我。
我を傷つけんことを懼る。
- 我 … われわれ。二竪子を指す。
- 懼 … おそれる。心配する。
焉逃之。
焉にか之を逃れん、と。
- 焉 … 「いずくにか~」と読み、「どこに~か」と訳す。場所を問う疑問形。
- 之 … 緩の治療を指す。
其一曰、居肓之上、膏之下、若我何。
其の一曰く、肓の上、膏の下に居らば、我を若何せん、と。
- 其 … 二竪子を指す。
- 肓 … 横隔膜の上のかくれた部分。
- 膏 … 心臓の下部の脂肪の部分。
- 若我何 … 我々をどうすることができようか(いや、どうすることもできない)。
- 若~何 … 「~をいかんせん」と読み、「~をどうしようか、いやどうしようもない」と訳す。反語形。「如~何」「奈~何」も同じ。
醫至曰、疾不可爲也。
医至りて曰く、疾は為む可からざるなり。
- 医至曰 … 名医の緩が到着し、(景公を診察して)言った。
- 疾不可為也 … 病気は治すことができません。
- 為 … 治す。治療する。
- 不可 … 「~べからず」と読み、「~できない」と訳す。不可能を表す。
在肓之上、膏之下、攻之不可。
肓の上、膏の下に在りて、之を攻むるは不可なり。
- 攻 … 治療する。
- 不可 … できない。
達之不及、藥不至焉。
之に達せんとするも及ばず、薬至らず。
- 達之不及 … 鍼を用いても届きません。
- 薬不至 … 薬も効きません。
- 焉 … 文末・句末に置かれ、断定の気持ちを表す置き字。訓読しない。
不可爲也。
為む可からざるなり、と。
- 不可為也 … 治療することができません。
- 為 … 治す。治療する。
公曰、良醫也。
公曰く、良医なり、と。
- 公 … 景公。
- 良医 … 名医。
厚爲之禮而歸之。
厚く之が礼を為して之を帰らしむ。
- 厚 … 手厚く。
- 之礼 … 診察してくれた謝礼。
- 帰之 … 緩を帰らせた。「之」は、緩を指す。「帰」は、「かえらしむ」と使役に読む。
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