虎の威を借る狐
虎の威を借る狐
- 出典:『戦国策』楚(ウィキソース「戰國策 (鮑彪注, 四庫全書本)/卷05」参照)
- 解釈:力のないものが他人の権勢に頼って威張ること。「虎の威を仮る」「虎の威を借る」とも。
- 戦国策 … 漢の劉向(前77~前6)の編。戦国時代の各国の出来事や、諸国を遊説した縦横家(ショウオウカとも)の策謀を国別に集めたもの。テキストには姚氏三十三巻本と鮑氏十巻本との二種類がある。ウィキペディア【戦国策】参照。
〔宣王、荊宣王問羣臣〕
荊宣王問群臣曰、吾聞北方之畏昭奚恤也。果誠何如。群臣莫對。江乙對曰、
荊宣王問群臣曰、吾聞北方之畏昭奚恤也。果誠何如。群臣莫對。江乙對曰、
荊の宣王、群臣に問いて曰く、吾、北方の昭奚恤を畏るるを聞く。果たして誠に何如、と。群臣対うる莫し。江乙対えて曰く、
- 荊 … 楚の国。
- 昭奚恤 … 楚の宰相。
虎求百獸而食之、得狐。
虎、百獣を求めて之を食らい、狐を得たり。
- 百獣 … 多くの獣。「百」は「多くの」の意。
- 而 … 置き字。順接の働きをする。直前の語に「~て」「~して」と送り仮名をつける。
- 食 … 漢文では必ず「くらう」と読む。
- 得 … 捕まえた。
狐曰、子無敢食我也。
狐曰く、子敢えて我を食らうこと無かれ。
- 子 … あなた。通常は、成人した男子に対する敬称。
- 敢 … 「あえて」と読み、「決して」と訳す。
- 無 … 「なかれ」と読み、「~するな」と訳す。禁止の意を示す。
天帝使我長百獸。
天帝、我をして百獣に長たらしむ。
- 天帝 … 天の神。天の主宰者。
- 使 … 「~(をして)…(せ)しむ」と読み、「~に…させる」と訳す。使役を表す。
- 使我長百獣 … 私を百獣の王とさせている。
今、子食我、是逆天帝命也。
今、子、我を食らわば、是れ天帝の命に逆らうなり。
- 命 … 命令。
子以我爲不信、吾爲子先行。
子、我を以て信ならずと為さば、吾、子の為に先行せん。
- 以我為不信 … 私の(言う)ことを信用できないというのなら。「以~為…」は、「~をもって…となす」と読み、「~を…とする(思う)」と訳す。
- 先行 … 先に立って歩く。
子隨我後觀。
子、我が後に随いて観よ。
- 随我後 … 私の後ろについて来て。
百獸之見我、而敢不走乎。
百獣の我を見て、敢えて走らざらんや、と。
- 敢不走乎 … どうして逃げないことがあろうか、いや必ず逃げ出すだろう。「走」は逃げる。「敢不~乎」は「あえて~ざらん(や)」と読み、「どうして~しないことがあろうか、いや必ず~する」と訳す。反語の意を示す。
虎以爲然。
虎、以て然りと為す。
- 以為 … 「もって~となす」と読み、「~と思う」と訳す。「以A為B」のA(ここでは狐の言葉)が省略された形。「以為えらく」と同じ。
- 然 … もっともだ。なるほど。そのとおり。
故遂與之行。
故に遂に之と行く。
- 遂 … 「ついに」と読み、「そのまま」と訳す。「とうとう」の意味ではない。
- 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB与」と読む。「與」は「与」の旧字体。
獸見之皆走。
獣、之を見て皆走る。
虎不知獸畏己而走也。
虎、獣の己を畏れて走るを知らざるなり。
- 畏 … 恐れる。
以爲畏狐也。
以為えらく、狐を畏るるなり、と。
- 以為 … 「おもえらく~と」と読み、「~と思う」と訳す。「以て~と為す」と同じ。
こちらもオススメ!
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | な行 | は行 |
ま行 | や行 | ら行・わ |
論語の名言名句 |