蟷螂の斧
蟷螂の斧
- 淮南子 … 前漢時代の思想書。二十一巻。漢の劉安(前179~前122)編。道家思想を基本に、諸家の思想や学説が総合的に記述されている。ウィキペディア【淮南子】参照。
〔淮南子、人間訓〕
齊莊公出獵。
齊莊公出獵。
斉の荘公出でて猟す。
有一蟲、擧足將搏其輪。
一虫有り、足を挙げて将に其の輪を搏たんとす。
- 一虫 … 一匹の虫。
- 将 … 「まさに~んとす」と読み、「今にも~しようとする」と訳す。再読文字。
- 輪 … 車輪。
- 搏 … 打ちかかる。
問其御曰、此何蟲也。
其の御に問いて曰く、此れ何の虫ぞや、と。
- 御 … 御者。
對曰、此所謂螳螂者也。
対えて曰く、此れ所謂螳螂なる者なり。
- 対 … 目上の人に答えるときに「対」を用いる。
- 所謂 … 世に言われている。通常言われている。
- 螳螂 … かまきり。「蟷」が正字。
其爲蟲也、知進而不知却、不量力而輕敵。
其の虫たるや、進むを知りて却くを知らず、力を量らずして敵を軽んず、と。
- 也 … 文中の「也」は「~や」と読み、「~は」と訳す。強調の意を示す。
- 不量力 … 自分の力量をわきまえない。
- 而 … 置き字。順接の働きをする。直前の語に「~て」「~して」と送り仮名をつける。
- 軽敵 … 敵を軽く見る。
莊公曰、此爲人而必爲天下勇武矣。
荘公曰く、此れ人たらば必ず天下の勇武為らん、と。
- 勇武 … 勇気があって武芸にすぐれている人物。勇士。
- 矣 … 置き字。訓読しない。断定の意を示す。
廻車而避之。
車を廻らして之を避く。
- 廻 … 迂回させる。
- 之 … 「螳螂」を指す。
勇武聞之、知所盡死矣。
勇武之を聞き、死を尽くす所を知る。
- 所尽死 … 死力を尽くすべき所。命がけで働く所。
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