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蟷螂の斧

蟷螂(とうろう)の斧(おの)
  • 出典:『淮南子』人間訓(ウィキソース「淮南子/人間訓」参照)、『韓詩外伝』巻八(ウィキソース「韓詩外傳/卷第8」参照)
  • 解釈:弱い者が自分の力をわきまえず、強い相手に立ち向かうこと。身の程をわきまえない行動をすることの喩え。かまきりが前脚をあげて、斉(せい)の荘公(そうこう)が乗る大きな車に立ち向かったという故事から。「蟷螂の斧」とは、カマキリの前足のこと。「蟷螂」は「螳螂」「螗蜋」とも書く。「蟷螂(とうろう)が斧(おの)を取(と)りて隆(りゅう)車(しゃ)に向(む)かう」「蟷螂(とうろう)車轍(しゃてつ)に当(あ)たる」とも。
  • 淮南子 … 前漢時代の思想書。二十一巻。漢の劉(りゅう)安(あん)(前179~前122)編。道家思想を基本に、諸家の思想や学説が総合的に記述されている。ウィキペディア【淮南子】参照。
〔淮南子、人間訓〕
齊莊公出獵。
斉(せい)の荘公(そうこう)出(い)でて猟(りょう)す。
  • 斉 … 周代に太公望呂(りょ)尚(しょう)の建てた国。今の山東省に存在した。桓公の代に管仲を用いて覇者となった。ウィキペディア【姜斉】参照。
  • 荘公 … 春秋時代、斉の君主。在位前553~548。ウィキペディア【荘公光】参照。
有一蟲、擧足將搏其輪。
一(いっ)虫(ちゅう)有(あ)り、足(あし)を挙(あ)げて将(まさ)に其(そ)の輪(りん)を搏(う)たんとす。
  • 一虫 … 一匹の虫。
  • 将 … 「まさに~んとす」と読み、「今にも~しようとする」と訳す。再読文字。
  • 輪 … 車輪。
  • 搏 … 打ちかかる。
問其御曰、此何蟲也。
其(そ)の御(ぎょ)に問(と)いて曰(いわ)く、此(こ)れ何(なん)の虫(むし)ぞや、と。
  • 御 … 御者。
對曰、此所謂螳螂者也。
対(こた)えて曰(いわ)く、此(こ)れ所謂(いわゆる)螳螂(とうろう)なる者(もの)なり。
  • 対 … 目上の人に答えるときに「対」を用いる。
  • 所謂 … 世に言われている。通常言われている。
  • 螳螂 … かまきり。「蟷」が正字。
其爲蟲也、知進而不知却、不量力而輕敵。
其(そ)の虫(むし)たるや、進(すす)むを知(し)りて却(しりぞ)くを知(し)らず、力(ちから)を量(はか)らずして敵(てき)を軽(かろ)んず、と。
  • 也 … 文中の「也」は「~や」と読み、「~は」と訳す。強調の意を示す。
  • 不量力 … 自分の力量をわきまえない。
  • 而 … 置き字。順接の働きをする。直前の語に「~て」「~して」と送り仮名をつける。
  • 軽敵 … 敵を軽く見る。
莊公曰、此爲人而必爲天下勇武矣。
荘公(そうこう)曰(いわ)く、此(こ)れ人(ひと)たらば必(かなら)ず天(てん)下(か)の勇(ゆう)武(ぶ)為(た)らん、と。
  • 勇武 … 勇気があって武芸にすぐれている人物。勇士。
  • 矣 … 置き字。訓読しない。断定の意を示す。
廻車而避之。
車(くるま)を廻(めぐ)らして之(これ)を避(さ)く。
  • 廻 … 迂回させる。
  • 之 … 「螳螂」を指す。
勇武聞之、知所盡死矣。
勇(ゆう)武(ぶ)之(これ)を聞(き)き、死(し)を尽(つ)くす所(ところ)を知(し)る。
  • 所尽死 … 死力を尽くすべき所。命がけで働く所。
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