田家春望(高適)
田家春望
田家の春望
田家の春望
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻六、『全唐詩』巻二百十四、『高常侍集』巻八(『四部叢刊 初篇集部』所収)、『高常侍集』巻八(『唐五十家詩集』所収)、『万首唐人絶句』五言・巻七(明嘉靖刊本影印、文学古籍刊行社、1955年)、『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、51頁)、『唐詩品彙』巻四十、他
- 五言絶句。蕪・徒(平声虞韻)。
- ウィキソース「田家春望」「高常侍集 (四部叢刊本)/卷第八」参照。
- 田家 … 田舎の家。
- 春望 … 春の眺め。
- この詩は、作者が不遇で田舎に隠れ住んでいたとき、戸外の春景色を眺め、感慨を詠んだもの。劉開揚『高適詩集編年箋註』(中華書局、1981年)の年譜には、開元二十二年(734)、三十一歳の作とある。
- 高適 … ?~765。盛唐の詩人。滄州渤海(山東省)の人。字は達夫または仲武。天宝八載(749)、有道科に推挙され、受験して及第。封丘(河南省封丘県)の尉に任ぜられたが辞任し、辺塞を遊歴した。晩年は刑部侍郎、左散騎常侍に至った。辺塞詩人として岑参とともに「高岑」と並び称される。『高常侍集』八巻がある。ウィキペディア【高適】参照。
出門何所見
門を出づれば何の見る所ぞ
- 出門何所見 … 門を出れば、目に入るものは何か。王粲の「七哀の詩」(『文選』巻二十三)に「門を出づれば見る所無く、白骨 平原を蔽う」(出門無所見、白骨蔽平原)とある。ウィキソース「七哀詩 (王粲)」参照。
- 何 … 『唐詩品彙』では「無」に作る。
春色滿平蕪
春色 平蕪に満つ
- 春色 … 春の景色。春の趣き。謝朓の「徐都曹に和す」(『文選』巻三十)に「宛洛は遨游に佳く、春色は皇州に満つ」(宛洛佳遨游、春色滿皇州)とある。宛洛は、宛邑(南陽)と洛陽との二都。遨游は、気ままに遊び楽しむこと。皇州は、帝都の地。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
- 平蕪 … 雑草の生い茂った平地。蕪は、生い茂った雑草。または雑草が生い茂って荒れること。陶淵明の「帰去来の辞」に「帰りなんいざ、田園将に蕪れなんとす」(歸去來兮、田園將蕪)とある。ウィキソース「歸去來辭並序」参照。また江淹の「郊外望秋答殷博士」(『古詩紀』巻八十五)に「白露江皋を掩い、青満ちて平地蕪る」(白露掩江皋、靑滿平地蕪)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷085」参照。
- 満 … 満ち溢れている。
可歎無知己
歎ず可し 知己無きを
- 可歎 … 嘆かわしいことよ。嘆かわしいことに。
- 歎 … 『古今詩刪』では「嘆」に作る。同義。
- 可 … ここでは「~するのに値いする」の意。
- 知己 … 自分のことをよく理解してくれる人。『史記』晏嬰伝に「君子は己を知らざるに詘するも、己を知る者に信ぶ」(君子詘於不知己、而信於知己者)とある。ウィキソース「史記/卷062」参照。また刺客伝・豫譲の条にも「嗟乎、士は己を知る者の為に死し、女は己を説ぶ者の為に容る」(嗟乎、士爲知己者死、女爲説己者容)とある。ウィキソース「史記/卷086」参照。また秦宓の「遠遊」(『古詩紀』巻二十七)に「巌穴我が隣に非ず、林麓知己無し」(巖穴非我鄰、林麓無知己)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷027」参照。
- 己 … 『四部叢刊本』『唐五十家詩集本』『万首唐人絶句』『古今詩刪』『唐詩品彙』では「巳」に作る。
高陽一酒徒
高陽の一酒徒
- 高陽一酒徒 … 高陽の一飲んだくれ。漢の高祖劉邦が陳留を通過したとき、酈食其が面会を申し出た。高祖は取り次ぎの使者にどんな人物かと尋ね、儒者のようであると答えたため、儒者には会う必要がないと言い、使者がそのことを食其に伝えて断った。食其は目を見開き、剣に手をかけて、「自分は高陽の酒徒である。儒者ではない」と言って高祖に伝えさせた。高祖はあわてて食其を招き入れたという故事に基づく。『史記』酈生伝に「酈生目を瞋らし剣を案じて使者を叱して曰く、走れ、復た入りて沛公に言え、吾は高陽の酒徒なり、儒人に非ざるなり、と」(酈生瞋目案劍叱使者曰、走、復入言沛公、吾高陽酒徒也、非儒人也)とある。ウィキソース「史記/卷097」参照。ここでは作者が自分を酈食其になぞらえている。
- 高陽 … 漢の陳留郡の高陽。今の河南省開封市杞県の西南にある高陽鎮。河北省保定市の東南にある高陽県のことではない。『史記』酈生伝に「酈生食其は、陳留の高陽の人なり」(酈生食其者、陳留高陽人也)とある。ウィキソース「史記/卷097」参照。
- 一 … 『全唐詩』には「一作憶」とある。
- 酒徒 … 飲んだくれ。酒飲み。
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