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人日寄杜二拾遺(高適)

人日寄杜二拾遺
人日(じんじつ) 杜二(とじ)拾(しゅう)遺(い)に寄(よ)す
高適(こうせき)
  • 七言古詩。堂・郷・腸(下平声陽韻)、預・慮・處(去声御韻)、春・塵・人(上平声真韻)。
  • ウィキソース「人日寄杜二拾遺」参照。
  • 人日 … 陰暦正月七日。
  • 杜二 … 杜甫。二は、排行。
  • 拾遺 … 官名。天子の過ちを諫める役。
  • 高適 … ?~765。盛唐の詩人。滄州渤海(山東省浜州市)の人。一説に渤海郡蓨(しゅう)県(河北省景県)の人。字(あざな)は達(たつ)夫(ふ)または仲武。天宝八載(749)、有道科(科挙の一科)に推挙され、受験して及第。汴(べん)州の封(ふう)丘(きゅう)(河南省封丘県)の尉となったが、後に辞任し、辺塞を遊歴した。晩年は刑部侍郎、左散騎常侍に至った。辺塞詩人として岑参とともに「高岑」と並び称され、王之渙・王昌齡・岑参と合わせて「辺塞四詩人」とも称される。『高常侍集』八巻がある。ウィキペディア【高適】参照。
人日題詩寄草堂
人日(じんじつ) 詩(し)を題(だい)して草堂(そうどう)に寄(よ)す
  • 草堂 … 杜甫が住していた成都の浣花草堂を指す。
遙憐故人思故郷
遥(はる)かに憐(あわ)れむ 故(こ)人(じん)の故(こ)郷(きょう)を思(おも)うを
  • 故人 … 古くからの友人。杜甫を指す。
柳條弄色不忍見
柳条(りゅうじょう) 色(いろ)を弄(ろう)して見(み)るに忍(しの)びず
  • 柳条 … 柳の枝。
  • 弄色 … ここでは柳の枝が新芽を見せ始めていること。
梅花滿枝空斷腸
梅(ばい)花(か) 枝(えだ)に満(み)ちて空(むな)しく断(だん)腸(ちょう)
  • 空 … 『全唐詩』には「一作堪」と注する。
  • 断腸 … 非常に悲しい様子。腸(はらわた)がちぎれるほどの悲痛な思い。後漢の蔡琰(さいえん)(一説に蔡琰に仮託したもの)の楽府「胡笳十八拍」(『楽府詩集』巻五十九、『楚辞後語』巻三)の第五拍に「雁(かり)飛ぶこと高く、邈(はる)かにして尋ね難し、空(むな)しく腸(はらわた)を断ちて思い愔愔(あんあん)たり」(雁飛高兮邈難尋、空斷腸兮思愔愔)とある。ウィキソース「胡笳十八拍」「樂府詩集/059卷」「楚辭集注 (四庫全書本)/後語卷3」参照。また、三国魏の文帝(曹丕)の「燕歌行」(『文選』巻二十七、『玉台新詠』巻九)に「群燕(ぐんえん)辞し帰り雁(かり)南に翔(かけ)る、君が客遊(かくゆう)を念(おも)うて思い腸(はらわた)を断つ」(群燕辭歸雁南翔、念君客遊思斷腸)とある。ウィキソース「燕歌行 (曹丕)」参照。
身在南蕃無所預
身(み)は南蕃(なんばん)に在(あ)りて預(あずか)る所(ところ)無(な)く
  • 南蕃 … 南方の異民族の地。『全唐詩』では「遠藩」に作り、「一作南蕃」と注する。
  • 無所預 … 中央の政治に関与しない。
心懷百憂復千慮
心(こころ)に懐(いだ)く 百憂(ひゃくゆう)復(ま)た千慮(せんりょ)
  • 百憂 … いろいろな種類の多くの心配。『詩経』小雅・無将大車に「百憂を思う無かれ、祇(た)だ自ら疷(や)む」(無思百憂、祇自疷兮)とある。ウィキソース「詩經/無將大車」参照。また、三国魏の曹植「王粲に贈る」詩(『文選』巻二十四)に「誰か君をして念(おも)い多からしめ、自ら百憂を懐(いだ)かしむ」(誰令君多念、自使懐百憂)とある。ウィキソース「贈王粲」参照。
  • 千慮 … 深くいろいろと考えること。
今年人日空相憶
今年(こんねん)人日(じんじつ) 空(むな)しく相(あい)憶(おも)う
明年人日知何處
明年(みょうねん)人日(じんじつ) 知(し)んぬ何(いず)れの処(ところ)ぞ
  • 人 … 『全唐詩』には「一作此」と注する。
  • 知何処 … どこにいることやら、わからない。知は、下に疑問の言葉が来るので「知らず」の意となる。
一臥東山三十春
一(ひと)たび東山(とうざん)に臥(ふ)して三十春(さんじっしゅん)
  • 一臥東山 … 晋の謝安が会稽の東山に隠棲して悠々自適の生活を送ったという故事による。
  • 三十春 … 三十年。
豈知書劍老風塵
豈(あ)に知(し)らんや 書剣(しょけん) 風塵(ふうじん)に老(お)いんとは
  • 書剣 … 書物と剣。転じて、学問と武芸。
  • 風塵 … 俗事。
龍鐘還忝二千石
竜鐘(りゅうしょう)還(ま)た忝(かたじけの)うす 二(に)千石(せんせき)
  • 竜鐘 … 老いさらばえたさまの形容。
  • 忝 … 過分な地位や禄高を受けていること。
  • 二千石 … 漢代、地方長官の禄高。後世では刺史・太守・知県などの地方長官を呼ぶようになった。
愧爾東西南北人
愧(は)ず 爾(なんじ) 東西南北(とうざいなんぼく)の人(ひと)
  • 愧爾 … 君に対して恥ずかしい。
  • 東西南北人 … 一定の住居を持たず、自由に各地を放浪する人。『礼記』檀弓(だんぐう)上篇にみえる孔子の言葉、「今丘や、東西南北の人なり」(今丘也、東西南北之人也)に基づく。ウィキソース「禮記/檀弓上」参照。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻二(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百十三(排印本、中華書局、1960年)
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