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邯鄲少年行(高適)

邯鄲少年行
邯鄲(かんたん)少(しょう)年(ねん)行(こう)
高適(こうせき)
  • 七言古詩。子・裏・死(上声紙韻)、紛・君(上平声文韻)、薄・索(入声薬韻)、遊・求・頭(下平声尤韻)。
  • ウィキソース「邯鄲少年行 (高適)」「高常侍集 (四部叢刊本)/卷第五」参照。
  • 邯鄲少年行 … 邯鄲は、現在の河北省邯鄲市。戦国時代、趙の都。少年行は、楽府題のひとつ。若者の歌。行は、歌・曲の意。『楽府古題要解』巻下、結客少年の条に「生を軽んじ義を重んじ、慷慨以て功名を立つるを言うなり」(言輕生重義、慷慨以立功名也)とある。ウィキソース「樂府古題要解」参照。『文苑英華』では「少年行」に作り、「一作邯鄲少年行」と注する。
  • 高適 … ?~765。盛唐の詩人。滄州渤海(山東省浜州市)の人。一説に渤海郡蓨(しゅう)県(河北省景県)の人。字(あざな)は達(たつ)夫(ふ)または仲武。天宝八載(749)、有道科(科挙の一科)に推挙され、受験して及第。汴(べん)州の封(ふう)丘(きゅう)(河南省封丘県)の尉となったが、後に辞任し、辺塞を遊歴した。晩年は刑部侍郎、左散騎常侍に至った。辺塞詩人として岑参とともに「高岑」と並び称され、王之渙・王昌齡・岑参と合わせて「辺塞四詩人」とも称される。『高常侍集』八巻がある。ウィキペディア【高適】参照。
邯鄲城南游俠子
邯鄲(かんたん)城南(じょうなん) 游俠(ゆうきょう)の子(こ)
  • 南 … 『全唐詩』には「一作西」と注する。
  • 游俠子 … 男伊達(だて)の若者。
自矜生長邯鄲裏
自(みずか)ら矜(ほこ)る 邯鄲(かんたん)の裏(うち)に生長(せいちょう)すと
  • 矜 … 自慢する。『全唐詩』には「一作言」と注する。
千場縱博家仍富
千場(せんじょう) 博(はく)を縦(ほしいまま)にして家(いえ)仍(な)お富(と)み
  • 千場 … ばくちの場数の多いこと。
  • 博 … ばくち。
  • 仍 … それでもなお。
幾處報讎身不死
幾処(いくしょ)か讎(あだ)を報(ほう)じて身(み)死(し)せず
  • 処 … 『全唐詩』では「度」に作る。
  • 報讎 … 敵(かたき)を討つ。
宅中歌笑日紛紛
宅中(たくちゅう)の歌笑(かしょう) 日(ひ)に紛紛(ふんぷん)
  • 宅中 … 若者の屋敷。
  • 歌笑 … 宴会の歌声や笑い声。
  • 笑 … 『文苑英華』では「舞」に作る。
  • 紛紛 … 入り乱れてにぎやかな様子。畳語。『孟子』滕文公上篇に「何(なん)為(す)れぞ紛紛然として百工と交易する」(何爲紛紛然與百工交易)とある。ウィキソース「孟子/滕文公上」参照。また、南朝梁の簡文帝の詩「聖製十六首」(『玉台新詠』巻九)の第六首「倡(しょう)楼(ろう)の怨 節(せつ)一首」に「上(じょう)林(りん)紛紛として花落ち、淇(き)水(すい)漠漠として苔(こけ)浮かばん」(上林紛紛花落、淇水漠漠菭浮)とある。上林は、天子の庭園、上林苑。淇水は、川の名。漠漠は、広々として果てしない様子。ウィキソース「倡樓怨節」参照。
門外車馬如雲屯
門外(もんがい)の車(しゃ)馬(ば) 雲(くも)の屯(たむろ)するがごとし
  • 如雲屯 … 雲がたむろするように多く集まること。『全唐詩』では「常(一作矗)如雲(一作如雲屯)」に作る。
未知肝膽向誰是
未(いま)だ知(し)らず 肝胆(かんたん)誰(たれ)に向(む)かってか是(ぜ)なる
  • 未知 … まだわからない。
  • 肝胆 … 本心。
令人卻憶平原君
人(ひと)をして却(かえ)って平原君(へいげんくん)を憶(おも)わしむ
  • 人 … 『全唐詩』には「一作此」と注する。
  • 平原君 … 戦国時代の四君のひとり。趙の武霊王の子。名は勝。平原は号。食客は常に数千人に達したという。ウィキペディア【平原君】参照。
君不見今人交態薄
君(きみ)見(み)ずや 今人(きんじん)交態(こうたい)の薄(うす)きを
  • 君不見 … 見たまえ。ここの「君」は特定の人物を指さない。南朝梁の費(ひ)昶(ちょう)の楽府「行路難二首」(『玉台新詠』巻九)の第一首に「君見ずや 長安客舎の門、倡(しょう)家(か)の少女 名は桃根(とうこん)」(君不見長安客舍門、倡家少女名桃根)とある。倡家は、娼家に同じ。遊女屋。ウィキソース「行路難 (費昶)」参照。
  • 今人 … 今の世の人。『楚辞』九章・渉江に「前世と与(とも)にして皆な然り、吾又た何ぞ今の人を怨みん」(與前世而皆然兮、吾又何怨乎今之人)とある。ウィキソース「楚辭/九章」参照。
  • 交態 … つきあい方。
黄金用盡還疎索
黄金(おうごん)用(もち)い尽(つ)くせば還(ま)た疎索(そさく)
  • 疎索 … よそよそしいさま。語頭子音〔s〕が同じ双声の語。
以茲感歎辭舊遊
茲(ここ)を以(もっ)て感歎(かんたん)して旧遊(きゅうゆう)を辞(じ)し
  • 以茲 … そこで。
  • 歎 … 『全唐詩』には「一作激」と注する。
  • 旧遊 … これまでの交友。
更於時事無所求
更(さら)に時事(じじ)に於(お)いて求(もと)むる所(ところ)無(な)し
  • 時事 … 世間のこと。
且與少年飮美酒
且(しばら)く少(しょう)年(ねん)と美(び)酒(しゅ)を飲(の)み
  • 且 … まあしばらく。
往來射獵西山頭
往来(おうらい)射猟(しゃりょう)せん 西山(せいざん)の頭(ほとり)
  • 往来 … 行き来すること。
  • 射猟 … 狩猟。
  • 西山 … 肝膽の町の西方の山。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻二(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百十三(排印本、中華書局、1960年)
  • 『高常侍集』巻五(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『高常侍集』巻上([明]許自昌編、『前唐十二家詩』所収、万暦三十一年刊、内閣文庫蔵))
  • 『高常侍集』巻五(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『文苑英華』巻一百九十四(影印本、中華書局、1966年)
  • 『唐詩品彙』巻二十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻五([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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