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塞上聞吹笛(高適)

塞上聞吹笛
塞(さい)上(じょう)にて笛(ふえ)を吹(ふ)くを聞(き)く
高適(こうせき)
  • 七言絶句。還・閒・山(上平声刪韻)。
  • ウィキソース「和王七玉門關聽吹笛」「高常侍集 (四部叢刊本)/卷第八」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「王七(おうしち)の玉門関にて笛を吹くを聴くに和す」(和王七玉門關聽吹笛)に作り、題下に「一に塞上にて笛を聞くに作る」(一作塞上聞笛)とある。また詩句にも異同があり、「胡人笛を吹く(一に羌に作る)戍楼(じゅろう)の間(かん)、楼上蕭条として海(一に明に作る)月間(しず)かなり、借問す落梅凡(およ)そ幾曲ぞ、風に従いて一夜関山に満つ」(胡人吹〔一作羌〕笛戍樓間、樓上蕭條海〔一作明〕月閒、借問落梅凡幾曲、從風一夜滿關山)とある。『四部叢刊本』『唐五十家詩集本』『万首唐人絶句』『古今詩刪』『唐詩品彙』では「塞上聴吹笛」に作る。『文苑英華』では「塞上聴吹笛」に作り、前半二句のあとに「一作胡人羗笛戍樓間、樓上蕭條明月間」と注する。『河岳英霊集』では「塞上聞笛」に作り、詩句は「胡人羗笛戍樓間、樓上蕭條明月閑、借問梅花何處落、風吹一夜滿關山」に作る。『国秀集』では「和王七度玉門關上吹笛」に作り、詩句は「胡人吹笛戍樓間、樓上蕭條海月閑、借問落梅凡幾曲、從風一夜滿關山」に作る。『才調集』では宋済の作とし、詩題を「塞上聞笛」に作り、詩句は「胡兒吹笛戍樓間、樓上蕭條海月閒、借問梅花何處落、風吹一夜滿關山」に作る。
  • 塞上 … 辺境の塞(とりで)のほとりで。
  • この詩は、辺境の塞(とりで)のほとりで、笛の音を聴いて詠んだもの。
  • 高適 … ?~765。盛唐の詩人。滄州渤海(山東省浜州市)の人。一説に渤海郡蓨(しゅう)県(河北省景県)の人。字(あざな)は達(たつ)夫(ふ)または仲武。天宝八載(749)、有道科(科挙の一科)に推挙され、受験して及第。汴(べん)州の封(ふう)丘(きゅう)(河南省封丘県)の尉となったが、後に辞任し、辺塞を遊歴した。晩年は刑部侍郎、左散騎常侍に至った。辺塞詩人として岑参とともに「高岑」と並び称され、王之渙・王昌齡・岑参と合わせて「辺塞四詩人」とも称される。『高常侍集』八巻がある。ウィキペディア【高適】参照。
雪淨胡天牧馬還
雪(ゆき)浄(きよ)く 胡(こ)天(てん) 馬(うま)を牧(ぼく)して還(かえ)れば
  • 雪浄 … 雪が浄らかに降り積もっている様子。
  • 胡天 … 胡地の空。遊牧民族の地の空。
  • 牧馬還 … 放牧の馬を連れて帰ってくると。牧馬は、放し飼いの馬。『説文解字』巻三下、攴部に「牧は、牛を養う人なり」(牧、養牛人也)とある。ウィキソース「說文解字/03」参照。
月明羌笛戍樓閒
月(つき)は明(あき)らかに 羌(きょう)笛(てき) 戍楼(じゅろう)の間(かん)
  • 月明 … 月明かりのもとに。月が明るく照らしている中。
  • 羌笛 … もとは羌族が吹く笛のこと。羌族は、チベット系異民族。ここでは、羌笛を吹いているのは胡人ではなく、辺境の守備兵であろう。後漢の馬融「長笛の賦」(『文選』巻十八)に「近世の双笛は羌より起る。羌(きょう)人(ひと)竹を伐(き)りて未だ已(お)わるに及ばざるに、竜水中に鳴きて己を見(あらわ)さず。竹を截(き)りて之を吹くに声相似たり。其の上孔を剡(けず)りて之を通洞し、裁(き)りて以て簻(むち)に当て便にして持ち易し。易の京君明音律を識り、故に本四孔にして加うるに一を以てす。君明の加うる所の孔後に出で、是を商声と謂い、五音畢(そな)わる」(近世雙笛從羌起。羌人伐竹未及已、龍鳴水中不見己。截竹吹之聲相似。剡其上孔通洞之、裁以當簻便易持。易京君明識音律、故本四孔加以一。君明所加孔後出、是謂商聲、五音畢)とある。ウィキソース「長笛賦」参照。
  • 戍楼 … 見張り用の櫓(やぐら)。物見櫓(やぐら)。戍は、武器を持って国境を守ること。『説文解字』巻十二下、戈部に「戍は、辺を守るなり」(戍、守邊也)とある。ウィキソース「說文解字/12」参照。
  • 間 … あたり。
借問梅花何處落
借問(しゃもん)す 梅(ばい)花(か) 何(いず)れの処(ところ)よりか落(お)つる
  • 借問 … ちょっとお尋ねしますが。三国魏の曹植の楽府「七哀の詩」(『文選』巻二十三、『玉台新詠』巻二では「雑詩五首其一」、『楽府詩集』巻四十一では「怨詩行二首其二」と題す)に「借問す歎ずる者は誰(たれ)ぞと。言う是れ客子の妻なりと」(借問歎者誰。言是客子妻)とある。客子は、旅人。ウィキソース「七哀詩 (曹子建)」参照。
  • 梅花 … この梅の花は。笛の曲名「梅花落」(『楽府詩集』巻第二十四・横吹曲辞・漢の横吹曲)に掛けている。ウィキソース「樂府詩集/024卷」参照。
  • 何処落 … どこから落ちてくるのだろうか。どこから散ってくるのだろうか。
風吹一夜滿關山
風(かぜ)吹(ふ)いて 一(いち)夜(や) 関山(かんざん)に満(み)つ
  • 風吹 … 風に吹かれて。風の吹くままに。
  • 一夜 … 一晩中。夜もすがら。
  • 関山 … 関所のある山。辺塞の山。関は、関塞。国境の関所の砦。笛の曲名「関山月」(『楽府詩集』巻二十三・横吹曲辞・漢横吹曲)に掛けている。楽府解題に「関山月は離別を傷むなり」(關山月傷離別也)とある。ウィキソース「樂府詩集/023卷」参照。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百十四(排印本、中華書局、1960年)
  • 『高常侍集』巻八(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『高常侍集』巻八(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『万首唐人絶句』七言・巻四(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)
  • 『文苑英華』巻二百十二(影印本、中華書局、1966年)
  • 『古今詩刪』巻二十一(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『唐詩品彙』巻四十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『河岳英霊集』巻上(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
  • 『国秀集』巻下(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
  • 『才調集』巻一(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
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