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除夜作(高適)

除夜作
除(じょ)夜(や)の作(さく)
高適(こうせき)
  • 七言絶句。眠・然・年(下平声先韻)。
  • ウィキソース「除夜作 (高適)」「高常侍集 (四部叢刊本)/卷第八」参照。
  • 詩題 … 『万首唐人絶句』『唐詩別裁集』では「除夜」に作る。
  • 除夜 … 大(おお)晦(みそ)日(か)の夜。除夕。歳除。
  • この詩は、作者が旅先で大晦日の夜を迎え、そのときの感慨を詠んだもの。場所及び制作年は不明であるが、劉開揚『高適詩集編年箋註』(中華書局、1981年)の年譜には、天宝九載(750)、四十七歳の作とある。
  • 高適 … ?~765。盛唐の詩人。滄州渤海(山東省浜州市)の人。一説に渤海郡蓨(しゅう)県(河北省景県)の人。字(あざな)は達(たつ)夫(ふ)または仲武。天宝八載(749)、有道科(科挙の一科)に推挙され、受験して及第。汴(べん)州の封(ふう)丘(きゅう)(河南省封丘県)の尉となったが、後に辞任し、辺塞を遊歴した。晩年は刑部侍郎、左散騎常侍に至った。辺塞詩人として岑参とともに「高岑」と並び称され、王之渙・王昌齡・岑参と合わせて「辺塞四詩人」とも称される。『高常侍集』八巻がある。ウィキペディア【高適】参照。
旅館寒燈獨不眠
旅館(りょかん)の寒灯(かんとう) 独(ひと)り眠(ねむ)らず
  • 旅館 … 宿屋。旅籠屋。客舎。旅舎。旅亭。
  • 寒灯 … 薄暗く、寒々とした灯。南朝斉の謝朓「冬緒羈懐、蕭諮議虞田曹劉江二常侍に示す」詩に「寒灯宵夢を耿(て)らし、清鏡暁髪を悲しむ」(寒燈耿宵夢、淸鏡悲曉髮)とある。暁髪は、白けてきた髪。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷069」参照。
  • 独不眠 … ひとり眠れないでいる。
客心何事轉悽然
客心(かくしん) 何事(なにごと)ぞ 転(うた)た悽然(せいぜん)
  • 客心 … 旅人の心。旅人の思い。ここでは、作者の心を指す。西晋の陸機の楽府「悲(ひ)哉行(さいこう)」(『文選』巻二十八)に「遊客(ゆうかく)は春林を芳(かんば)しとするも、春(しゅん)芳(ぽう)は客心を傷ましむ」(遊客芳春林、春芳傷客心)とある。遊客は、旅人。ウィキソース「昭明文選/卷28」参照。また、劉宋の謝霊運の詩「魏の太子の鄴中集(ぎょうちゅうしゅう)の詩に擬す八首」(『文選』巻三十)の第二首「王粲」に「沮(しょ)漳(しょう)は自ずから美なる可きも、客心は外(がい)奨(しょう)に非ず」(沮漳自可美、客心非外奬)とある。沮漳は、沮水と漳水。荊州(現在の湖北省一帯)を流れる川。外奨は、(その地に留(とど)まるようにと)外から奨(すす)めること。ウィキソース「擬魏太子鄴中集詩八首」参照。
  • 何事 … どうしたことか。
  • 転 … いよいよ。ますます。
  • 悽然 … 物寂しいさま。痛ましいさま。『説文解字』巻十下、心部に「悽は、痛むなり」(悽、痛也)とある。ウィキソース「說文解字/10」参照。
故鄉今夜思千里
故(こ)郷(きょう) 今(こん)夜(や) 千(せん)里(り)に思(おも)う
  • 故郷 … 故郷の人たち。故郷の家族たち。
  • 思千里 … (私が)故郷の人たちを千里も離れた所から思いやる。一方、「千里を思う」と読んだ場合、故郷の人たちが千里も離れた所にいる私を思っている、という解釈になる。
  • 服部南郭『唐詩選国字解』には「今夜は、除夜とて、人はみなにぎやかにたのしめども、吾れはこのやうに、千里の故郷のことを、思ひ出してかなしむ」とある。『漢籍国字解全書』第10巻(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
霜鬢明朝又一年
霜鬢(そうびん) 明朝(みょうちょう) 又(また)一年(いちねん)
  • 霜鬢 … 霜のような白い鬢(びん)。
  • 霜 … 『全唐詩』では「愁」に作り、「一作霜」と注する。『唐詩品彙』では「愁」に作る。『万首唐人絶句』では「秋」に作る。
  • 明朝 … 明日の朝。
  • 又一年 … 数え年なので、一夜明けると一つ年をとる。
  • 又 … 『全唐詩』には「一作更」と注する。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百十四(排印本、中華書局、1960年)
  • 『高常侍集』巻八(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『高常侍集』巻八(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『万首唐人絶句』七言・巻四(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)
  • 『古今詩刪』巻二十一(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『唐詩品彙』巻四十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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